特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 控訴人(プリンタメーカー)は、トナーカートリッジに搭載する情報記憶装置(ICチップ)に関する3件の特許権を有していた。被控訴人ら(リサイクルトナー事業者)は、控訴人が製造・販売するレーザープリンタ用の使用済みトナーカートリッジから純正の電子部品を取り外し、自社製造の電子部品に取り替えた上でトナーを再充填し、再生品として販売していた。控訴人は、純正品の電子部品にデータの書換えを制限する措置(書換制限措置)を講じており、再生品を装着するとトナー残量表示が「?」となり段階的な残量表示や予告表示がされなくなるが、印刷自体は支障なく行える状態であった。控訴人が特許権侵害を理由に差止め・廃棄及び損害賠償1000万円を請求したところ、原審(東京地裁)は、被告電子部品が技術的範囲に属することは認めたものの、控訴人の請求は権利の濫用に当たるとして全部棄却した。そこで控訴人が控訴した。 【争点】 (1) 被告電子部品(設計変更前後)の本件各特許発明の技術的範囲の属否、(2) 無効の抗弁(進歩性欠如・明確性要件違反)の成否、(3) 消尽の成否、(4) 権利の濫用の成否、(5) 差止めの必要性、(6) 損害額。 【判旨】 知財高裁は原判決を変更し、差止め・廃棄請求及び損害賠償470万円の限度で控訴人の請求を認容した。消尽の成否については、被告電子部品は控訴人が譲渡した原告電子部品とは別物であり同一性を有しないから消尽は成立しないとした。権利濫用の成否について、書換制限措置が講じられた再生品でも印刷機能自体に支障はなく、トナー切れ表示・印刷停止の動作は純正品と同様であること、残量表示がされないことへの対応はユーザーにとって大きな負担とはいえないこと、リサイクル事業者も電子部品の形状を工夫すれば特許権侵害を回避しつつ残量表示を実現することが技術的に可能であること、書換制限措置には品質管理上の相応の合理性があること等を認定した。これらを総合考慮し、控訴人の特許権行使はリサイクル品をもっぱら市場から排除する目的によるものとは認められず、独占禁止法に抵触するものでも特許制度の趣旨を逸脱するものでもないから、権利の濫用には当たらないと判断した。損害額については、特許法102条2項に基づき被控訴人らの限界利益8400万円を推定損害額としつつ、本件各発明がトナーカートリッジの一部品である電子部品に関する発明であり、トナー搬送という基本的性能に係る技術ではなく顧客吸引力が限定的であることから、寄与割合を5%として推定を95%覆滅し、420万円に弁護士費用50万円を加えた470万円を認容した。