水俣病認定義務付等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、原告ら7名(昭和28年〜昭和35年生まれ)が、不知火海沿岸地域に居住し又はかつて居住していた者として、公害健康被害の補償等に関する法律(公健法)4条2項に基づき、熊本県知事又は鹿児島県知事に対して水俣病認定申請をしたところ、いずれも棄却する処分を受けたため、被告熊本県及び被告鹿児島県に対し、各棄却処分の取消しと水俣病である旨の認定の義務付けを求めた事案である。チッソ水俣工場は昭和7年からアセトアルデヒドの製造を開始し、その過程で生成されたメチル水銀が水俣湾等に排出されたことにより、魚介類を通じて周辺住民に水俣病が発生した。原告らは、メチル水銀にばく露し、四肢末端優位の感覚障害等がありながら、昭和52年判断条件に定める症候の組合せを満たさないとして認定を棄却されたものである。 【争点】 主要な争点は、原告らが水俣病にり患しているか否かであり、その前提として、(1)原告らのメチル水銀ばく露の有無及び程度(争点1)、(2)水俣病の病像論・発症閾値論・感覚障害のみの水俣病の有無・ばく露終了後の遅発性発症の有無・長期微量汚染型水俣病の可否(争点2)、(3)水俣病り患の判断枠組み(昭和52年判断条件の位置づけ、三浦医師らの診断の信用性、公的検診録の信用性、所見変動の許容性、他疾患の可能性)(争点3)、(4)原告ら個別の水俣病り患の有無(争点4)が争われた。 【判旨】 請求棄却(義務付けの訴えは却下)。裁判所は、平成25年最高裁判決に従い、公健法上の水俣病認定は、個々の患者について諸般の事情と関係証拠を総合的に検討し、個別的な因果関係の有無を判断すべきであるとした。昭和52年判断条件に定める症候の組合せが認められない場合でも水俣病と認定する余地はあるが、水俣病の各症候は単独では非特異的であるため、他疾患による合理的な疑いが医学的に排斥されない限り、メチル水銀ばく露との因果関係は認められないとした。また、ばく露停止から発症までの潜伏期間は数か月から4年程度であり、長期微量汚染型水俣病の可能性を根拠付ける医学的知見は存在しないと判断した。原告ら側の三浦医師らの診断については、末梢神経が障害されないとの前提に立つ独自の見解であり採用できず、感覚検査にも方法論上の問題があるとして信用性を否定した。原告らの立証の程度についても、行政処分の取消訴訟における因果関係の立証は高度の蓋然性が必要であり、50%以上の可能性で足りるとする原告らの主張を排斥した。以上を前提に原告ら7名それぞれについて個別に検討した結果、いずれも水俣病にり患しているとは認められないとして、処分取消請求を棄却し、義務付けの訴えを却下した。