横領被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2あ131
- 事件名
- 横領被告事件
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 裁判年月日
- 2022年4月18日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄差戻
- 裁判官
- 菅野博之、三浦守、草野耕一
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 被告人は、Aが取締役を務める有限会社Bが農地である本件土地を購入するにあたり、農地転用許可を得るために自らが代表理事を務める組合名義で所有権移転登記を経由し、許可取得後にBへ移転登記する約束であった。ところが、被告人は、D(Aの兄)に土地代金500万円を支払わせて本件土地を組合名義で取得した後、DやBに無断で本件土地を株式会社Fに800万円で売却し、所有権移転登記を完了させた。第1審は横領罪の成立を認め懲役1年6月としたが、原審(東京高裁)は、農地法所定の許可を受けていないBに所有権は移転しないから、Bを被害者とする横領罪は成立し得ないとして職権で第1審判決を破棄し、無罪を言い渡した。これに対し検察官が判例違反を理由に上告した。 【争点】 農地の売買契約において、譲受人の委託に基づき第三者名義で農地法所定の許可を取得し所有権移転登記が経由された場合に、当該第三者が土地を不法に領得したとき、刑法252条1項の横領罪が成立するか。農地法所定の許可を得ていない譲受人には所有権が移転しないことから、所有者でない譲受人からの委託によって横領罪の成立が認められるかが問題となった。 【判旨(量刑)】 最高裁は原判決を破棄し、東京高裁に差し戻した。まず、農地法所定の許可を得ていない譲受人に所有権は移転しないため、譲受人から第三者への委託は所有者でない者からされたことになるとした。しかし、①譲渡人は譲受人に所有権を移転する意思を有していること、②譲渡人は第三者と共同して許可申請手続や登記移転手続を行う立場にあること、③売買契約自体は成立しており譲受人は条件付き権利を仮登記により保全できる関係にあることから、譲渡人は譲受人が第三者に占有(登記名義の保有)を委託することを許容し、その権限を付与していると認められるとした。そのうえで、委託者が物の所有者でなくとも横領罪が成立し得ると判示した。また、農地法違反があることについても、農地法の趣旨は耕作者の地位の安定等にあり、違反が直ちに公序良俗に反するとまではいえないこと、非農地化により許可なく所有権移転の効力が生じる可能性があることを指摘し、委託関係の成立過程に農地法違反があるというだけで横領罪の成立を否定すべきではないとした。もっとも、被告人の自己出捐の主張について原審が判断していないため、差戻審でこの点を審理すべきとした。裁判官全員一致の意見である。