相続税更正処分等取消請求事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2行ヒ283
- 事件名
- 相続税更正処分等取消請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2022年4月19日
- 裁判種別・結果
- 判決・棄却
- 裁判官
- 長嶺安政、戸倉三郎、宇賀克也、林道晴、渡惠理子
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 共同相続人である上告人らが、被相続人(94歳で死亡)から相続した不動産について、財産評価基本通達の定める方法により価額を評価して相続税の申告をしたところ、札幌南税務署長から、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当であるとして、不動産鑑定評価額に基づく更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため、これらの取消しを求めた事案である。被相続人は死亡の約3年前に信託銀行等から合計約10億円を借り入れて本件各不動産(甲不動産を約8億3700万円、乙不動産を約5億5000万円)を購入しており、被相続人及び上告人らは、この購入・借入れが相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつこれを期待してあえて実行したものであった。通達評価額は甲不動産が約2億円、乙不動産が約1億3000万円(合計約3億3000万円)にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額は0円とされていたが、鑑定評価額は甲不動産が約7億5000万円、乙不動産が約5億2000万円(合計約12億7000万円)であり、約4倍のかい離があった。 【争点】 評価通達の定める方法による画一的な評価を上回る鑑定評価額に基づく更正処分が、相続税法22条及び租税法上の平等原則に違反するか。 【判旨】 最高裁は上告を棄却し、裁判官全員一致の意見で更正処分を適法と判断した。まず、相続税法22条にいう「時価」とは客観的な交換価値をいい、評価通達は時価の評価方法を定めた通達にすぎず国民に対し直接の法的効力を有しないから、課税価格に算入される財産の価額は客観的な交換価値としての時価を上回らない限り同条に違反しないとした。次に、租税法上の平等原則について、課税庁が評価通達に従い画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、特定の者についてのみ通達評価額を上回る価額とすることは、合理的な理由がない限り平等原則に違反し違法であるとしつつ、画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反する事情がある場合には合理的な理由があると判示した。本件では、通達評価額と鑑定評価額のかい離のみでは上記事情があるとはいえないものの、本件購入・借入れがなければ課税価格の合計額は6億円超であったのに、これにより相続税が0円となること、及び被相続人らが租税負担の軽減を意図してあえて企画・実行したことを踏まえ、評価通達による画一的評価を行うことは他の納税者との間に看過し難い不均衡を生じさせ実質的な租税負担の公平に反するとして、鑑定評価額に基づく更正処分は適法であると結論づけた。