傷害、暴行被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和2あ1751
- 事件名
- 傷害、暴行被告事件
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 裁判年月日
- 2022年4月21日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄差戻
- 裁判官
- 岡正晶、山口厚、深山卓也
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 被告人は、交際相手の双子の男児A及びB(当時7歳)に対する傷害等の各事実で起訴された。Aに対する傷害の公訴事実の要旨は、被告人が平成28年4月3日午後、東京都府中市内の公園において、Aの頭部に回転性加速度減速度運動を伴う外力を加える暴行を加え、急性硬膜下血腫等及び重度の認知機能障害等の後遺症を伴う脳実質損傷の傷害を負わせたというものである。被告人は陸上活動の指導としてAを公園に連れ出しており、防犯カメラの死角となった時間帯にAが受傷した。被告人は受傷直後に医師に対し虚偽の説明をしていた。 第1審は本件暴行を認定し懲役3年を言い渡したが、控訴審(東京高裁)は、医師の意見からA以外の者による強い外力が加わった事実は認定できないとして第1審判決を破棄し、Aに対する傷害について無罪を言い渡した。検察官が上告した。 【争点】 控訴審が第1審の事実認定を覆してAに対する傷害を無罪とした判断は、事実誤認の審査として十分な検討を尽くしたものといえるか。具体的には、医師の意見のみならず、受傷当時の状況や被告人の言動を総合考慮して、A自身の行為による受傷の可能性を否定できるか否かの検討が必要ではないか。 【判旨】 破棄差戻し。最高裁は、まず、医師の意見のみからはA自身の行為による受傷の具体的可能性を否定できないとした控訴審の判断自体は是認した。前日に相撲で頭を打った後の嘔吐から、架橋静脈が弱い外力でも破断し得る状態にあった可能性を認めた原判断も是認できるとした。 しかし、控訴審が、医師の意見から強い外力の認定ができないことを理由に第1審の認定は前提を欠くとし、被告人の供述が信用できないだけでは暴行を認定できないと説示しただけで事実誤認があるとした点は是認できないとした。本件では、医師の意見に加え、①受傷当時の状況(被告人の指導テスト中に被告人の近くで受傷したこと)、②被告人の言動(交際相手への説明の欠如、医師への虚偽説明、公判供述の不合理性)を総合して、A自身の行為による受傷の具体的可能性を否定できるかを検討しなければ、第1審判決の事実認定の当否は判断できないと指摘した。控訴審はこの必要な検討を尽くしておらず、第1審判決の事実認定が論理則・経験則等に照らし不合理であることを十分に示したとは評価できず、刑訴法382条の解釈適用を誤ったものであるとして、原判決を破棄し東京高裁に差し戻した。裁判官全員一致の意見。