琉球民族遺骨返還等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 琉球民族であると主張する原告ら5名が、昭和初期に京都帝国大学の研究者らが沖縄県今帰仁村の百按司墓(むむじゃなばか)から持ち去った遺骨(以下「本件遺骨」)を、京都帝国大学を承継した被告(京都大学)が現在まで占有保管していることについて、①憲法・国際人権法に基づく返還請求権又は祭祀承継者としての所有権に基づき、本件遺骨の引渡しを求めるとともに、②被告が本件遺骨を返還しないことが原告らの民族的・宗教的自己決定権を侵害し、また研究者である原告Cの実見申出に誠実に対応しなかったことが違法であるとして、不法行為に基づく慰謝料各10万円の支払を求めた事案である。 【争点】 ①国際人権法(自由権規約27条等)又は憲法(13条・20条)に基づく遺骨返還請求権の有無、②民法897条1項の祭祀承継者としての所有権に基づく返還請求権の有無、③被告が本件遺骨を返還せず保管していることの不法行為該当性、④原告Cに対する被告の対応の違法性。 【判旨】 請求をいずれも棄却した。 争点①について、自由権規約27条は、締約国が少数民族の権利を否定してはならないことを確認し、政策推進の政治的責任を宣言したものにとどまり、少数民族に属する者に遺骨返還を請求する具体的権利を付与するものとは解されず、憲法13条・20条も原告らに遺骨返還請求権を直接付与するものとはいえないとした。 争点②について、遺骨は祭祀財産に準じて慣習に従い祖先の祭祀を主宰すべき者に帰属すると解されるところ、不特定多数の追慕者全員に遺骨が帰属するとは解し得ないとして、原告ら全員が祭祀承継者であるとの主張を排斥した。第一尚氏の子孫である原告A・Bについても、百按司墓の参拝を行う門中・子孫は他にも多数存在し、今帰仁村教育委員会も独自に返還協議を要請していること等から、同原告らを祭祀主宰者と認めることはできないとした。 争点③について、祖先の遺骨を墓内に安置して祀りたいとの期待は宗教上の人格的利益として法的保護に値する余地があるとしつつも、被告の保管態様は博物館収蔵室内で適切に管理されており、保管目的も学術資料の散逸・劣化防止にあること、百按司墓には42体分の遺骨が現存していること等を総合勘案し、社会生活上許容される限度を超えた侵害とはいえないとした。争点④についても、標本利用申請の不許可や学長発言等が不法行為法上違法とはいえないとした。 なお、付言として、本件遺骨の処遇は原告らと被告間のみで解決できる問題ではなく、関係諸機関を交えた協議により解決に向けた環境整備が図られるべきであると述べた。