覚醒剤取締法違反被告事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4う1
- 事件名
- 覚醒剤取締法違反被告事件
- 裁判所
- 広島高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年4月21日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 伊名波宏仁、富張真紀、伊名波宏仁
- 原審裁判所
- 山口地方裁判所_周南支部
AI概要
【事案の概要】 被告人は、①令和3年7月4日、山口県下松市内のホテルにおいて覚醒剤結晶粉末0.222gを所持し、②同年9月2日頃、同県周南市内のホテルにおいて覚醒剤水溶液を自己の身体に注射して使用した(覚醒剤取締法違反2件の併合罪)。被告人は昭和62年以降、覚醒剤取締法違反による懲役前科9犯を有し、いずれも服役している。平成30年3月に前刑の執行を終了して出所したが、平成31年頃から覚醒剤の使用を再開し、二、三か月に1回の頻度で0.4g程度を購入して6~8回で使い切る生活を繰り返す中で本件犯行に及んだ。①の覚醒剤は令和3年6月に島根県で、②の覚醒剤は同年8月に徳島県でそれぞれ別に入手したものであり、両犯行間には約2か月の間隔がある。原審(山口地方裁判所周南支部)は被告人を懲役4年に処し、弁護人がこれを量刑不当として控訴した。 【争点】 原判決の懲役4年という量刑が重過ぎて不当か否か。弁護人は、①被告人の深刻な依存症を考慮すれば前刑出所後1年間の断薬努力は評価されるべき、②長期服役より社会内での就労・治療・自助団体参加の方が再犯防止に合理的かつ効果的、③真摯な反省態度、④ダルクとの連携や精神保健センターへの通院等の再犯防止への決意を主張した。 【判旨(量刑)】 控訴棄却。広島高裁は、弁護人の主張をいずれも排斥した。①については、原判決は深刻な依存に陥ったこと自体を非難しており評価に誤りはない。②については、量刑判断の中核は犯罪行為にふさわしい刑を明らかにする点にあり、再犯防止は副次的目的にすぎないとし、収容処遇に再犯防止効果がないとの所論は是認できないとした。③④については行為責任に直接関係しない一般情状であり考慮に限度があるとした。 同種事案(営利目的なしの覚醒剤自己使用・1g未満所持、累犯前科あり、同種前科7犯以上、前刑終了後2年6か月以上経過)の最近約4年2か月分の裁判例112件の量刑傾向は懲役1年6月~4年に分布し、最多は懲役3年(30件)であった。本件の懲役4年は量刑分布の上限に位置するが、①所持と②使用の間に約2か月の間隔があり入手先も異なることから別罪として個別評価になじみやすく犯情が悪質な部類に属しうること、前科9犯の量刑推移に照らし意思決定が厳しく非難されるべきことから、いまだ量刑傾向を逸脱したとまではいえず、破棄しなければならないほどに重過ぎて不当とはいえないと判断した。