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【事案の概要】 弁護士である原告は、東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた刑事控訴事件の被告人の国選弁護人に選任された。控訴趣意書の提出期限(令和2年2月17日)が迫る中、原告は同月15日(土曜日)に東京拘置所で被告人と接見し、控訴趣意書案(A4版全11頁・ワープロ書き)の記載内容について打合せを行った。接見終了後、原告は同趣意書案を被告人に差し入れることを申し出たが、東京拘置所の職員及び監督当直者は、土曜日は物品の差入れ業務を行っていないことを理由にその申出を拒否した。原告は、この拒否が弁護人の接見交通権を違法に侵害するものであるとして、国に対し、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等合計12万1601円の支払を求めた。 【争点】 1. 東京拘置所の職員が控訴趣意書案の差入れ申出に応じなかったことの国賠法上の違法性の有無 2. 損害の内容及び損害額 【判旨】 裁判所は、弁護人等からの未決拘禁者に対する物品の差入れについて、刑事施設の長は管理運営上必要な制限をすることができる(法51条)としつつも、憲法上保障される弁護人依頼権に由来する接見交通権が実質的に損なわれないよう配慮する必要があり、当該事案の事情如何によっては裁量にも限度があるとした。 その上で、(1)本件文書は刑事控訴審の審理において重要な書面であり、提出期限まであと2日と切迫し、否認事件であることも考慮すると被告人に早期に交付する必要性が高かったこと、(2)本件文書はワープロ書き11頁で手書きの書込みや資料の添付もなく、日常的に差入物の検査業務に従事しない職員でも検査が可能であったこと、(3)正午頃の申出であり検査実施も比較的容易であったことを認定し、東京拘置所の職員には差入れ申出を受け付けて必要な検査を実施し被告人に交付すべき職務上の法的義務があったと判断した。閉庁日には物品の差入れ業務を行っていないという理由のみで申出を拒否したことは裁量の範囲を逸脱し、国賠法上違法であると認めた。 損害額については、直前の接見で控訴趣意書案が提示されていたこと等の事情を勘案し、慰謝料2万円及び弁護士費用2000円の合計2万2000円を認容した。通知書送付費用は相当因果関係のある損害とは認められないとして棄却した。