覚醒剤取締法違反被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、覚醒剤取締法違反(自己使用)の前科6件を有し、最終刑の執行終了から約2か月後の令和3年8月下旬頃から同年9月13日までの間に、覚醒剤を自己の身体に摂取して使用したとして起訴された事案である。被告人は、別件の道路交通法違反事件の関係者として札幌方面豊平警察署に出頭した際、取調べ中の異常な言動等から覚醒剤使用の嫌疑を持たれ、任意採尿を求められたが拒否。その後約2時間にわたり警察官に追尾され、最終的に強制採尿令状に基づき採取された尿から覚醒剤成分が検出された。 【争点】 弁護人は、被告人の尿から覚醒剤成分が検出されたことは争わないものの、強制採尿令状に基づく尿の差押手続に至るまでの捜査に複数の違法があり、尿の鑑定書等の証拠能力を否定すべきであるとして無罪を主張した。具体的には、①覚醒剤使用の嫌疑に基づく任意採尿要求の適法性、②豊平署から約2時間にわたる追尾・留め置き行為の適法性、③採尿令状呈示前に病院での強制採尿を告げたことの適法性、④捜査車両内で弁護士からの電話に応答させなかったことの適法性、⑤令状請求の疎明資料の適法性が争われた。 【判旨(量刑)】 裁判所は、争点①について、被告人の興奮・大声・上半身を左右に動かすなどの挙動と覚醒剤前科6件等から嫌疑の相当性を認め、適法とした。争点②について、被告人は地下鉄・タクシー・徒歩で広範囲に移動しており実質的逮捕には当たらず、強制採尿令状の執行に備えた所在確保として任意捜査の範囲内と判断した。争点③は、令状到着前の説明にすぎず執行着手ではないとした。争点⑤も、報告書の記載に改善の余地はあるが違法はないとした。 他方、争点④については、弁護士からの電話であると認識しながら応答を制限した行為は、任意捜査の範囲を逸脱し弁護人依頼権を侵害する違法なものであると認定した。しかし、この違法は既に適法に発付された採尿令状の執行を待つ段階で生じたものであり、尿の差押手続との間に実質的な因果関係はないとして、証拠能力は肯定した。 量刑について、覚醒剤の自己使用自体の悪質性、前刑執行終了から約2か月での再犯による顕著な依存性を指摘しつつ、捜査手続の違法も考慮し、求刑懲役3年6月に対し、懲役2年を言い渡した。