傷害、暴行(変更後の訴因:暴力行為等処罰に関する法律違反)被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 保育園の副園長兼保育士であった被告人が、平成30年6月から令和元年9月にかけて、同僚の保育士2名及び園児4名(当時3歳〜6歳)に対し、顔面を平手で叩く、背中や頭部を押して転倒させる、着衣をつかんで引っ張るなどの暴行を繰り返し、保育士1名に下口唇挫傷、園児2名に顔面打撲傷・下口唇挫創の各傷害を負わせたとして、傷害3件・暴行5件で起訴された事案。検察官は暴力行為等処罰法1条の3第1項前段の常習傷害・暴行として常習一罪の成立を主張した。 【争点】 (1) 訴因の特定の適否(日時の幅が広い公訴事実について刑訴法256条3項違反があるか) (2) 園児A・D及び保育士C・Fに対する各暴行・傷害の事実の存否(被告人は全件否認) (3) 園児G・Hに対する各行為の暴行該当性及び正当行為(刑法35条)該当性 (4) 暴力行為等処罰法上の常習性の有無 【判旨(量刑)】 訴因の特定について、被害者が幼児や時間経過後に申告した保育士であることから、検察官が関係証拠と突合して絞り込める範囲の日時を掲げたのは「できる限りの特定」であり適法とした。園児Aに対する傷害については、6歳児の司法面接における供述の信用性を慎重に吟味し、母親への自発的申告の経緯や、小児科医2名による二重条痕(成人の手指による殴打痕)との医学的所見との整合性から、暴行の事実を認定した。園児Dについても同様に司法面接の供述等から認定。保育士C・Fについては各供述の信用性を肯定した。園児G・Hに対する着衣をつかんで引っ張る行為は暴行に該当するとしつつ、配膳時の危険除去や挨拶の励行といった真っ当な狙いがあったとしても、幼少の園児を威圧する態様であり、口頭での促し等の段階的対応が不可能であった事情はないとして、正当行為の主張を排斥した。常習性については、保育士に対する行為には制裁の趣旨が認められるものの、園児に対する行為は態様が抑制的で制裁の趣旨が明瞭でなく、前科前歴もないことから、習癖としての常習性の認定には合理的疑いがあるとして否定し、併合罪として処理した。量刑は、保育園で累積されたあるまじき犯罪であるとしつつ、傷害結果がいずれも重くなく暴行態様に著しく悪質なものは含まれないことから、懲役2年・執行猶予4年とした(求刑懲役3年)。