AI概要
【事案の概要】 九州大学が開講する基幹教育科目「フィールド科学研究入門」の屋久島プログラムに参加中、大学1年生のB(当時19歳)が安房川河口付近で対岸に向けて遊泳した際に溺死した事故について、Bの両親である原告らが、担当教員の被告A教授に対し民法709条に基づき、被告大学法人に対し民法715条(主位的)又は国家賠償法1条1項(予備的)に基づき、損害賠償を求めた事案。被告Aは、救命胴衣を準備せず、参加学生の健康状態や水泳能力も確認しないまま、「適当に泳いでください」「自由に遊んでください」等と指示して入水させていた。前年にも学生が流されて溺れそうになる事故があり、被告A自身もレポートで危険性を認識していた。 【争点】 (1) 被告Aの過失の有無、(2) 国立大学法人に国賠法1条1項が適用されるか、(3) 過失相殺の可否、(4) 損害額。 【判旨】 裁判所は、被告法人に対する国賠法1条1項に基づく請求を一部認容し、原告らそれぞれに3850万1371円の支払いを命じた。被告Aに対する請求は棄却した。被告Aの過失について、安房川河口付近は地元で遊泳が危険視されていた場所であり、被告A自身も前年に流された経験や学生レポートから危険性を認識していたにもかかわらず、救命胴衣等の準備をせず、参加学生の健康状態・水泳能力の確認もしないまま入水を指示したことは、安全確保義務を怠ったものと認定した。国賠法の適用について、国立大学法人は国賠法1条1項の「公共団体」に該当し、教育研究活動は「公権力の行使」に含まれるとして、被告Aの個人責任を否定した。過失相殺について、被告Aの過失が重大であることに照らし、損害賠償額の減額を正当化するほどの事情とはいえないとして否定した。損害額は逸失利益4980万円、死亡慰謝料2500万円等の合計7700万2742円と認定した。