AI概要
【事案の概要】 順天堂大学医学部の入学試験を受験した女性原告ら(13名)が、同大学を運営する学校法人(被告)に対し、入学試験において女性受験者に対して一律に男性受験者より厳しい合格基準を設定する判定基準(本件判定基準)を秘密裏に用いていたことが不法行為に該当するとして、入学検定料等の費用、慰謝料及び弁護士費用の損害賠償を求めた事案である。本件判定基準は、一般入学試験A方式の一次試験では、同順位帯の受験者について女性は男性より1浪分厳しい基準で不合格とされ、二次試験では女性の合格点が男性より0.5点高く設定されるなど、複数の試験種別において少なくとも10年程度にわたり運用されていた。 【争点】 (1) 被告の不法行為責任の有無(本件判定基準の合理性及び情報提供義務違反の有無) (2) 原告らの損害の有無及び額(入学検定料等の因果関係、慰謝料額) 【判旨】 裁判所は、被告の不法行為責任を認め、原告らの請求を一部認容した。まず、私立大学であっても公の性質を有する教育機関として、入学者選抜において憲法14条1項の平等原則等の趣旨を尊重する義務を負うとした。本件判定基準は、性別という属性のみによって一律に女性受験者を不利益に取り扱うものであり、被告が主張する女子寮の収容人数の限界という理由については、第三者委員会の調査で女子寮の収容人数増加に連動した医学部女子合格者数の増員が確認できなかったこと等から、合理的根拠とは認められないと判断した。その上で、被告は入学試験に応募するに当たり原告らが誤った情報の下に意思決定を下すことがないように必要な情報を提供すべき信義則上の義務を負っていたにもかかわらず、本件判定基準の存在を秘し、かえって学風として「三無主義」(性別の差別のないこと)を掲げていたことから、原告らには本件判定基準の存在について予測可能性がなかったとして、被告の行為は原告らの意思決定の自由を侵害する不法行為に該当すると認定した。損害については、入学検定料・交通費・宿泊費は被告の行為と相当因果関係を有する損害と認め、慰謝料は1名につき1年度の受験当たり30万円、弁護士費用は上記損害合計額の1割と認定した。