在外日本人国民審査権確認等、国家賠償請求上告、同附帯上告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 国外に居住し国内の市町村に住所を有しない日本国民(在外国民)である原告らが、最高裁判所裁判官の国民審査において審査権を行使できないことの適否を争った事案である。原告X1は、主位的に次回の国民審査で審査権を行使できる地位にあることの確認を、予備的に審査権を行使させないことが違憲・違法であることの確認を求めた。また、原告らは、国会が在外国民に審査権行使を認める制度(在外審査制度)を創設する立法措置をとらなかったこと(立法不作為)により、平成29年10月22日施行の国民審査で投票できず精神的苦痛を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた。原審は、地位確認の訴えを却下し、違法確認の訴えに係る請求を認容する一方、損害賠償請求を全部棄却していた。 【争点】 (1) 国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことが憲法15条1項、79条2項・3項に違反するか。 (2) 地位確認の訴えの適法性および請求の当否。 (3) 違法確認の訴えの適法性および請求の当否。 (4) 立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されるか。 【判旨】 大法廷は、裁判官全員一致の意見で以下のとおり判示した。まず、審査権は国民主権の原理に基づき憲法に明記された主権者の権能であり、選挙権と同様の性質を有するから、憲法は国民に対して審査権を行使する機会を平等に保障していると解すべきであるとした。そして、審査権の制限が許されるのは、国民審査の公正を確保しつつ審査権行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難である場合に限られるところ、在外選挙制度の実績や点字投票における自書式投票の存在等に照らせば、在外審査制度の創設が事実上不可能とはいえず、国民審査法が在外国民に審査権行使を全く認めていないことは違憲であると判断した。地位確認の訴えについては適法と判断したが、現行法の解釈上、審査権行使が認められる地位にあるとはいえないとして請求を棄却した。違法確認の訴えについては適法とした上で請求を認容した。国家賠償請求については、平成10年の在外選挙制度創設時の国会質疑、平成17年大法廷判決、平成18年の在外選挙制度拡充、平成19年の国民投票法制定等の経緯に照らし、遅くとも平成29年国民審査当時には在外審査制度を創設する立法措置が必要不可欠であることが明白であったとして、立法不作為の国賠違法性を認め、各原告に5000円の損害賠償を認容した。 【補足意見】 宇賀克也裁判官は、審査権は間接的参政権として位置づけられ厳格な審査基準が適用されるべきこと、在外国民について衆議院議員総選挙と国民審査の投票日等に若干の差異が生じても憲法79条2項に違反しないと解されること、違法確認の訴えの確認の利益について平成17年大法廷判決との整合性等を補足的に論じた。