職務発明対価支払い請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 一審被告(ソニーグループ)の元従業員である一審原告が、在職中にした光ディスクにおけるエラー訂正技術の発明(本件発明)は職務発明であり、その特許を受ける権利を勤務規則等により一審被告に承継させたと主張して、改正前特許法35条3項に基づき、相当対価278億円余の一部である30億円及び遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。本件発明は、CD-ROMにおけるエラー訂正方式(CIRC方式を超える高精度訂正を実現し、CDをコンピュータのデータストレージとして使用可能にした技術)及びDVD-ROM等のエラー訂正技術に関するもので、いずれもCD-ROM規格・DVD規格の必須特許として採用された。一審被告はフィリップス社と共同でジョイントライセンスプログラムを運営し、多額のライセンス料を得ていたほか、子会社SCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)に対してもプレイステーションシリーズの製造販売に関しライセンス契約を締結していた。原審は約833万円を認容したが、一審原告・一審被告の双方が控訴した。 【争点】 (1) 本件発明1-5及び2-1により一審被告が受けるべき利益の額(ライセンス料配分額の算定方法、SCEライセンス契約における独占的利益の算定方法) (2) 一審被告の貢献度 (3) 共同発明者間における一審原告の貢献度 (4) 相当対価の額 (5) 相当対価支払請求権の消滅時効の成否 【判旨】 控訴審は、一審原告の控訴に基づき原判決を変更し、約3204万円及び遅延損害金の支払を命じた。一審被告の控訴は棄却した。 ライセンス料の算定について、ジョイントライセンスプログラムにおける独占的利益は、ライセンス料配分額のうち米国分を基礎とし、対象特許全体に対する本件特許の貢献割合を乗じて算出した。SCEライセンス契約については、SCEを一審被告のグループ会社としてではなく1ライセンシーとして扱っている以上、非差別的なライセンス条件で算定すべきとし、仮想積上げ方式(本件ジョイントライセンスプログラムのロイヤルティ基準で計算し、グループ会社優遇として80%を乗じる方式)を採用した。 一審被告の貢献度について、先行技術の蓄積、知的財産部の貢献、オープンライセンスポリシーの採用、規格普及のための投資・営業努力等を考慮し、ジョイントライセンスプログラムにつき95%、SCEライセンス契約につき97%とした。共同発明者間における一審原告の貢献度は、均等割合を超える特段の事情を認め3分の1とした。 消滅時効については、一審被告が時効完成後に支払った実施報奨金20万円及び50万円は、被告発明考案規定が旧法35条4項の趣旨に沿わないため相当対価の一部弁済にすぎず、債務承認に当たるとして、時効援用権の喪失又は時効中断を認め、消滅時効の成立を否定した。