AI概要
【事案の概要】 大学教授等である原告ら4名が、国会議員である被告に対し、被告がツイッターや雑誌対談、YouTube等のインターネット番組において行った投稿・発言により名誉を毀損され又は名誉感情を害されたと主張して、不法行為に基づく損害賠償(原告A1につき660万円、原告A2につき220万円、原告A3及びA4につき各110万円)及びツイート削除・謝罪文掲載を求めた事案である。原告らは、科研費(約1755万円)の支給を受けて「ジェンダー平等社会の実現に資する研究と運動の架橋とネットワーキング」と題する研究を行っていたところ、被告は、原告らが科研費を不正に使用している、研究がねつ造である、研究ではなく政治活動であるなどとする趣旨の発言等を、ツイッター(約12.9万人のフォロワー)、雑誌対談記事、複数のインターネット番組において繰り返し行った。 【争点】 主な争点は、①被告の各発言等が原告らに対する名誉毀損又は名誉感情の侵害に当たるか、②損害の発生及び額、③ツイート削除及び謝罪文掲載の要否である。原告らは、被告の発言が科研費の不正使用や研究のねつ造といった事実を摘示し、研究者としての社会的評価を低下させたと主張した。被告は、科研費の使途の適切性について問題提起をしたにすぎず、特定の研究者を攻撃したものではないと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、被告の各発言等について個別に検討し、いずれも名誉毀損又は名誉感情の侵害には当たらないと判断した。主な理由は以下のとおりである。①ツイッターにおける「ねつ造」との表現は、原告らの研究が虚偽の事実を基にしたものであるとの事実を摘示するものではなく、慰安婦問題に関する政府見解に基づき、同問題を女性の人権問題として捉えること一般に対する意見表明と解される。②「反日」との表現も、日本の国益に反するとの趣旨をいうものと解され、虚偽を発信するという意味とは認められない。③フェミニズム研究と無関係なイベントに科研費を支出しているとの指摘は、フェミニズム自体の意味が一義的でないことを踏まえれば、研究内容に対する批判的意見にすぎない。④科研費の不正支出との印象を与えるとの主張についても、被告の発言は全体として科研費の支給対象としてどのような研究がふさわしいかという制度的問題提起にすぎないと認定した。⑤動画番組における字幕については、被告自身が付したものではなく、字幕内容を被告の事実摘示として認定することはできないとした。以上より、被告の発言等はいずれも原告らの人格的価値に対する社会的評価を低下させるものとは認められないとして、原告らの請求を全部棄却した。