AI概要
【事案の概要】 被告(株式会社カネカメディックス)の元従業者である原告が、在職中に行った職務発明(塞栓形成用体内留置具等に関する3件の特許発明)について、被告の発明規程に基づく登録報奨金及び特許法35条3項に基づく相当の対価として合計2494万円の支払を求めた事案である。原告は平成11年に被告に入社し、平成14年にカネカ(被告の親会社)に特殊異動して業務に従事した後、平成15年12月に退社した。本件各発明に係る特許を受ける権利は平成14年9月に被告に譲渡されたが、原告が本件訴えを提起したのは令和2年11月であった。被告は、登録報奨金請求権及び相当の対価請求権のいずれについても消滅時効を援用した。 【争点】 (1) 登録報奨金請求権及び相当の対価請求権の対象となる特許登録の範囲、(2) 消滅時効の成否、(3) 被告の発明規程の退職条項(退職により報奨金を受ける権利が消滅する旨の定め)が公序良俗に反し無効か、(4) 消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用か、(5) 相当の対価の額。中心的争点は消滅時効の成否であり、原告は、退職条項の存在により退職後は請求できないと誤解していたため事実上の障害があったと主張し、消滅時効の起算点は弁護士に相談した令和元年11月であると主張した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、消滅時効の成否を先に判断した。相当の対価請求権の消滅時効の起算点について、被告発明規程には対価の支払時期の定めがなく、相当の対価請求権は特許を受ける権利の承継時に期限の定めのないものとして発生したと認定し、承継時(平成14年9月)を起算点とした。その結果、10年の消滅時効は平成24年9月に完成しており、令和2年の提訴時には既に時効が完成していた。登録報奨金請求権についても、商行為によって生じた債権として消滅時効期間は5年とし、同じく承継時を起算点として平成19年9月に時効が完成したと判断した。原告の退職条項により権利行使に事実上の障害があったとの主張については、退職条項は「報奨金」の消滅を定めるものにすぎず、特許法35条3項の相当の対価請求権の消長に関する定めは存在しないから、退職条項の存在をもって相当の対価請求権まで行使できなくなるとの誤解を直ちに生じさせるものではないとして退けた。消滅時効の援用が信義則違反・権利濫用に当たるとの主張も排斥した。