AI概要
【事案の概要】 本件は、「茶枝葉の移送方法並びにその移送装置並びにこれを具えた茶刈機」に関する特許権(特許第4349999号)を有する原告(製茶機械メーカー)が、被告(茶摘鋏・農機具メーカー)に対し、被告の乗用型摘採機2製品が本件特許の技術的範囲に属すると主張して、民法709条に基づく損害賠償(予備的に不当利得返還)として合計2億3000万円の支払を求めた事案である。本件特許は、従来の乗用型摘採機が刈刃前方からの送風(正面風)で茶葉を移送するために水平移送部が必要となり機械が大型化する問題を解決するため、刈刃後方から背面風を送り込む「圧力風の作用のみによって」茶枝葉を移送する装置を発明したものである。被告各製品は、刈刃の前方に回転ブラシを備え、この回転ブラシと圧力風の双方を用いて茶枝葉を移送する構造を有していた。 【争点】 主な争点は、(1)被告各製品が構成要件A「圧力風の作用のみによって」茶枝葉を移送する装置に該当するか、(2)先行技術(乙1公報)による新規性・進歩性欠如の無効の抗弁、(3)サポート要件違反の無効の抗弁、(4)平成22年の特許権不行使の合意の成否、(5)損害額であった。原告は、回転ブラシを取り外しても摘採量に有意な差がないとする実験結果を提出し、被告各製品は回転ブラシなしでも背面風のみで茶枝葉を移送できるため「圧力風の作用のみによって」を充足すると主張した。被告は、回転ブラシによる機械的移送と圧力風による風送を併用する製品であり、構成要件Aを充足しないと反論した。 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。まず「圧力風の作用のみによって」の解釈について、特許請求の範囲及び明細書の記載から、「圧力風」とは移送ダクト内部に流される空気流であり背面風及び補助的な正面風を含むものであるとした上で、「圧力風の作用のみによって」とは、茶枝葉の移送が圧力風の作用だけで実現されることを意味し、圧力風以外の作用が加わって移送が実現される場合にはこれを充足しないと判断した。被告各製品については、摘採する茶枝葉の長さに応じて回転ブラシの高さを適切に設定することが予定されており、刈り取られた茶枝葉は常時回転する回転ブラシに当たって移送ダクト内に送り込まれた後に圧力風で収容部に到達する構造であるから、圧力風以外の作用である回転ブラシの回転作用が加わって移送が実現されていると認定した。原告の実験結果については、構成要件充足性は回転ブラシを備えた被告各製品における移送態様自体で検討すべきであり、回転ブラシの有無による摘採量比較では「圧力風の作用のみによって」の充足を明らかにできないとして採用しなかった。以上により、被告各製品は構成要件Aを充足せず、本件各発明の技術的範囲に属しないとして、その余の争点を判断するまでもなく請求を棄却した。