AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「電気絶縁ケーブル」とする特許出願(特願2019-166439号)について、特許庁が進歩性欠如を理由に拒絶査定不服審判の請求は成り立たないとした審決の取消しを求めた事案である。原告(住友電気工業株式会社)は、平成25年の原出願から4回にわたる分割出願を経て本件出願をしたが、令和2年に拒絶査定を受け、審判請求後も審決で請求が退けられたため、知的財産高等裁判所に審決取消訴訟を提起した。 本願発明は、電動パーキングブレーキ用の2本の第1のコア材とアンチロックブレーキシステム用の2本の第2のコア材を撚り合わせたコア電線に、テープ部材を巻き、その上に被覆層を形成した電気絶縁ケーブルに関するものである。審決は、本願発明が引用発明(甲1公報記載のバスケーブル)及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたとして、進歩性を否定した。本件審決は6つの相違点を認定し、いずれも容易想到であると判断した。 【争点】 本願発明の引用発明に対する進歩性の有無。具体的には、(1)引用発明の認定の当否、(2)相違点1・2(ケーブルの用途を電動パーキングブレーキ用・ABS用とすること)及び相違点5(第2のコア材の導体断面積)に係る容易想到性、(3)相違点3(コア電線のみを巻くテープ部材)・相違点4(テープ部材上に形成された被覆層)及び相違点6(コア材とサブユニットの接触配置)に係る容易想到性が争われた。 【判旨】 裁判所は、審決を取り消した。まず、引用発明の認定については、原告が含めるべきと主張した「電源用線心がシースの内面に内接し、信号用線心とシースとの間に間隙が形成される」構成は、甲1公報の特許請求の範囲ではなく実施例に記載されたものにすぎず、課題解決手段とはいえないとして、審決の認定に誤りはないとした。相違点1・2・5については、引用発明が工業用にも用いられること等から、当業者が容易に想到し得たと判断した。 しかし、相違点3について、裁判所は、引用発明が線心の取り出しを容易にすることを課題の一つとし、線心の外周をシースで覆うのみの構成によりその課題を解決しているところ、テープ部材を巻く周知技術を適用すると、シース除去に加えてテープ部材の除去作業が必要となり、かえって作業性が損なわれ引用発明の効果を減殺する結果となるため、阻害要因があると認定した。相違点4・6もテープ部材を前提とする構成であるため、同様に容易想到とはいえないと判断した。以上から、本願発明の進歩性を否定した審決には誤りがあるとして、審決を取り消した。