AI概要
【事案の概要】 ドイツの写真家である原告が、ドローンを使用してシンガポールのマリーナ・ベイ・サンズホテルの屋上を空から撮影した写真(原告写真)を、写真投稿サイト「Flickr」にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY)の条件付きで投稿していたところ、不動産会社である被告が、クラウドソーシングサービスを通じて委託したフリーランスのライターが原告写真を複製して作成した記事を、自社のウェブサイトに著作者名のクレジット表示なく掲載した。原告は、被告に対し、著作権(複製権・公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)の侵害を理由に、11万円の損害賠償及び差止めを求めて提訴した。被告は、原告写真の著作物性を否定するとともに、クリエイティブ・コモンズの「コピーレフト」の精神を根拠に同意があったと主張し、さらに原告の請求がいわゆる「コピーレフト・トロール」による権利濫用であるとも主張して争った。 【争点】 主な争点は、(1)原告写真の著作物性、(2)原告写真の利用につき原告の同意があったか、(3)被告の故意又は過失の有無、(4)損害額、(5)原告の請求が権利濫用(コピーレフト・トロール)に当たるか、(6)過失相殺の成否、(7)差止めの必要性であった。 【判旨】 裁判所は、原告写真について、撮影の時間帯、天候、構図等の選択において原告の個性が表現されており、著作物に当たると認定した。被告が主張するドローンで撮影すれば類似の写真になるとの点については、構図等の選択に様々な工夫の余地があるとして退けた。原告の同意については、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスにより著作者名のクレジット表示を条件として利用を許諾していたにもかかわらず、被告はこれを表示しなかったとして、同意があったとはいえないと判断した。被告の過失については、ライターから納品された記事に写真の出典が記載されていなかったにもかかわらず、出典を確認しないままウェブサイトに掲載したことをもって注意義務違反を認めた。被告が主張するコピーレフト・トロールによる権利濫用についても、ライセンスの第2版と第4版の違いは損害賠償請求の範囲に影響せず、原告がコピーレフト・トロールに該当する根拠は認められないとして排斥した。損害額については、著作権法114条3項に基づく使用料相当額4万円、氏名表示権侵害による慰謝料1万円、弁護士費用1万円の合計6万円を認容し、差止請求についても、被告が写真データを完全に削除した事情が認められないことなどから侵害のおそれがあるとして認めた。