AI概要
【事案の概要】 本件は、アダルトDVD等の制作を行う原告(株式会社)が、氏名不詳者によってP2P型ファイル交換ソフトウェア「ビットトレント」上に原告の著作物であるアダルト動画の電子データをアップロードされ、公衆送信権(著作権)を侵害されたと主張して、アクセスプロバイダである被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、当該氏名不詳者の氏名又は名称、住所及び電子メールアドレスの開示を求めた発信者情報開示請求事件である。原告は、著作権侵害検出システム(トレントモニタリングシステム)を用いた調査会社の調査結果に基づき、被告の顧客が特定の日時にビットトレントを通じて本件作品をアップロードした事実を主張した。 【争点】 主たる争点は、被告の顧客(本件利用者)が本件作品をビットトレントにアップロードしたか否か、すなわち本件調査結果の信頼性である。被告は、調査会社が実施した同一性確認試験の信頼性は不明であり、一般社団法人テレコムサービス協会が信頼性を確認した検知システムによってIPアドレス等は特定されるべきであると主張し、本件利用者によるアップロードの立証は不十分であると争った。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を認容した。まず、ビットトレントの仕組みとして、ネットワークに参加している各コンピュータのIPアドレス、ポート番号、電子ファイルの保有状況等を公開する仕組みを有していることを認定した。その上で、本件調査結果について、調査会社がソフトウェアを用いてビットトレントネットワーク上の監視を行い、アップロードを行ったコンピュータのIPアドレス等を自動的にデータベースに記録した結果に基づくものであること、同一性確認試験において15個のコンピュータのIPアドレスと検知されたIPアドレスが完全に一致したこと、及びソフトウェアが公開NTPサーバと同期し内部時計を正確に保っていることを認定し、調査結果の信頼性に疑問を抱かせる具体的な事情は見当たらないとして、これを信頼できるものと判断した。したがって、本件利用者が本件作品の電子データをダウンロードした上、ビットトレントネットワークに接続させて自動的に送信し得る状態にしていたと認め、原告の著作権(公衆送信権)が侵害されたことは明らかであると結論づけた。被告の主張については、同一性確認試験や調査結果の信頼性に客観的な疑問を抱かせる事情を具体的に認めるに足りる証拠はないとして排斥した。