業務上横領被告事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人は、株式会社Bの取締役兼総務経理部長として経理業務を統括していたC(業務上占有者)と共謀の上、平成24年7月5日、同社名義の銀行口座から2415万2933円をCらが管理する口座に振込入金させて横領したとして、業務上横領罪で起訴された。被告人自身には業務上の占有者の身分がなく(非占有者)、刑法65条1項により業務上横領罪の共犯が成立するが、同条2項により横領罪(刑法252条1項)の刑を科すこととなる事案である。 【争点】 非占有者である被告人の公訴時効期間を、業務上横領罪の法定刑(10年以下の懲役→時効7年)と横領罪の法定刑(5年以下の懲役→時効5年)のいずれを基準に定めるべきか。犯罪行為終了日(平成24年7月5日)から公訴提起日(令和元年5月22日)まで約6年10か月が経過しており、基準次第で時効の成否が分かれる。 【判旨】 最高裁は、原判決を破棄し、免訴を言い渡した第1審判決を支持して控訴を棄却した。公訴時効制度の趣旨は処罰の必要性と法的安定性の調和にあり、処罰の必要性は犯人に科される刑に反映される。刑法65条2項により非占有者である被告人には横領罪の刑が科されるのであるから、公訴時効期間もその法定刑(5年以下の懲役)を基準とし、5年(刑訴法250条2項5号)と解するのが相当であるとした。これにより、公訴提起時に被告人に対する公訴時効は既に完成していたと判断した。裁判官全員一致の意見である。 【補足意見(山口厚裁判官)】 刑法65条2項は身分のない者に対する処罰の必要性の相違を科し得る刑に反映させる規定であり、同項適用後の刑で公訴時効期間を定めるのが相当である。刑訴法252条の「加重し、又は減軽しない刑」を基準とする規定は法律上の加重・減軽事由に関するものであり、刑法65条2項はこれに該当しないため制約を受けない。また、原判決が援用する共犯の統一的処理の理念についても、公訴時効期間の統一を求める規定は存在せず、制度趣旨に由来する要請を凌駕するものではないとした。さらに、業務上占有者に占有者が加功する場合は時効5年となるのに、より可罰的評価の軽い非占有者が7年となるのは不均衡であると指摘した。