損害賠償請求事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3受1205
- 事件名
- 損害賠償請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 裁判年月日
- 2022年6月17日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄自判
- 裁判官
- 菅野博之、三浦守、草野耕一
- 原審裁判所
- 東京高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により居住地が放射性物質で汚染されたと主張する住民らが、国に対し、経済産業大臣が電気事業法40条に基づく規制権限(技術基準適合命令)を行使して津波対策を東京電力に義務付けなかったことが違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた事案である。原審は国の責任を一部認容したため、国が上告した。 【争点】 経済産業大臣が、平成14年の地震調査委員会による長期評価(三陸沖から房総沖でM8クラスの津波地震が発生する可能性を指摘)を前提に規制権限を行使していれば、本件事故を防ぐことができたか(規制権限の不行使と事故との因果関係の有無)。 【判旨】 原判決中国敗訴部分を破棄し、住民らの控訴を棄却した。最高裁は、事故以前の津波対策は防潮堤等の設置により敷地の浸水を防ぐことが基本であり、規制権限が行使されていれば長期評価に基づく試算津波に対応した防潮堤等が設置された蓋然性が高いとした。しかし、実際の地震(M9.0・津波マグニチュード9.1)は長期評価の想定(津波マグニチュード8.2前後)をはるかに超える規模であり、試算津波と実際の津波では浸水深・浸水方向ともに大きく異なることから、試算津波を基準に設計された防潮堤等では本件津波による大量の海水浸入を防げなかった可能性が高いと判断した。また、事故以前に敷地浸水を前提とする水密化等の防護措置が主たる津波対策として採用された実績や知見は認められず、防潮堤等に加えてそのような対策が講じられた蓋然性があるとした原審の判断は合理性を欠くとした。 【補足意見】 菅野裁判官は、被害の回復は重要だが国家賠償責任の問題ではなく、原賠法等による救済の枠組みで対応すべきと述べた。草野裁判官は、長期評価規模の地震を仮定しても各原子炉の外部電源が維持された可能性を詳細に検討し、構成的因果関係も認められないと結論づけた。三浦裁判官は反対意見で、経済産業大臣は最新の知見に基づき速やかに規制権限を行使すべきであり、水密化措置等の多重防護を義務付けていれば事故は防げたとして、国の賠償責任を肯定すべきとした。