AI概要
【事案の概要】 本件は、被告(旭化成ファーマ株式会社)が有する「1回当たり100~200単位のPTH(副甲状腺ホルモン)が週1回投与されることを特徴とする骨粗鬆症治療/予防剤」に関する特許(特許第6522715号)について、原告(日医工株式会社)が請求した特許無効審判において、特許庁が無効審判請求を不成立とする審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許の請求項は、PTHを週1回200単位皮下注射する骨粗鬆症治療剤であって、(1)年齢65歳以上、(2)既存骨折あり、(3)骨密度がYAMの80%未満又は骨萎縮度I度以上、の3条件を全て満たす高リスク患者を対象とする骨折抑制用途に限定したものである。原告は、甲7発明(先行文献)に基づく進歩性欠如等を主張した。 【争点】 主な争点は、(1)甲7発明に基づく進歩性判断の誤り(取消事由1)、(2)甲6発明に基づく進歩性判断の誤り(取消事由2)、(3)サポート要件違反(取消事由3)、(4)実施可能要件違反(取消事由4)、(5)甲2発明に基づく新規性判断の誤り(取消事由5)である。中心的争点は取消事由1であり、本件発明と甲7発明との相違点B(投与対象患者を3条件充足患者に限定し骨折抑制用途とした点)の容易想到性及び予測できない顕著な効果の有無が問題となった。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、取消事由1に理由があるとして本件審決を取り消した。まず相違点Bの構成の容易想到性について、優先日当時の技術常識として、骨粗鬆症は骨強度低下により骨折リスクが増大する疾患であり、治療目的は骨折予防にあること、骨折の危険因子として低骨密度・既存骨折・年齢のエビデンスがあったことを認定した。そして、甲7発明の骨粗鬆症治療剤の投与対象をより新しい診断基準を参酌して本件3条件で選別することに困難はなく、65歳以上という年齢条件の設定もごく自然な選択であること、また骨密度増加が骨折予防に寄与するとの技術常識に照らせば骨折抑制用途とすることも容易であるとした。次に効果の顕著性について、本件明細書の実施例1は高リスク患者と低リスク患者の間で実質的には65歳以上か否かの差しか対比しておらず、実施例2は3条件充足患者内でのプラセボとの比較にすぎず、高リスク患者に対する骨折抑制効果が低リスク患者よりも優れていることを理解できないとした。被告が提出した実験成績証明書についても、既存骨折の有無のみが異なる群間の比較にすぎず、本件3条件全体の充足・非充足の対比として不十分であると判断した。以上から、相違点Bは容易想到であり顕著な効果も認められないとして、本件発明1及び2の進歩性を認めた審決の判断には誤りがあると結論付けた。