AI概要
【事案の概要】 被告(地方公共団体)が設置する小学校において、体育の授業としてサッカーが実施されていたところ、運動場に設置されていたフットサルゴールポスト(幅約3m、高さ約1.99m、重さ68.1kgの鉄製)が転倒し、当時小学4年生(10歳)であった児童がその下敷きになり、背部打撲による出血性ショックで死亡した。児童は、味方がゴールを決めたことに喜び、ゴールポスト上部から垂れ下がったゴールネットのロープにぶら下がったところ、ゴールポストが転倒したものである。亡児の両親である原告らが、被告に対し、主位的に教員らの安全配慮義務違反(国賠法1条1項)、予備的にゴールポストの設置・管理の瑕疵(同法2条1項)に基づく損害賠償を請求するとともに、事故後の調査報告義務違反に基づく損害賠償を請求した。 【争点】 1. 本件事故に関する被告の国賠法上の責任の有無(校長・教員らの予見可能性と義務違反) 2. 損害の発生及び額 3. 過失相殺の要否(児童がゴールポストにぶら下がった行為の評価) 4. 事故後の調査報告義務違反の有無(第三者委員会の設置・運営・報告の適否) 【判旨】 裁判所は、国賠法1条1項に基づく責任を認め、原告ら各自に1830万0851円及び遅延損害金の支払を命じた。 本件ゴールポストは、事故当時、左右の土台フレームともロープと鉄杭による固定がなされていなかったと認定した。実況見分の結果、左側はロープの長さが約20cm足りず固定不可能であり、右側は鉄杭の輪状部分が土で埋もれロープを通せない状態であった。校長は、平成25年に千葉県立高校で同種のゴールポスト転倒死亡事故が発生し文部科学省から通知がなされたことを認識しており、本件事故の発生を容易に予見できたとして、安全点検を徹底しゴールポストを固定すべき注意義務の違反を認めた。実験結果から、左右とも固定していれば転倒しなかったことが確認され、因果関係も肯定された。 過失相殺については、教員自身がゴールポストの危険性を認識しておらず児童への安全指導もなかったこと、10歳の児童が転倒の危険性を認識できたとはいえないこと、試合中に喜んでぶら下がった行為は突発的で非難の程度が低いこと、被告の安全管理上の過失が重大であることから、過失相殺を否定した。 調査報告義務違反の請求については、被告は第三者委員会を設置して詳細調査を実施し、教育長らが原告ら宅を訪問して各回の内容を報告し、傍聴も認めるなどの対応をしており、義務違反は認められないとして棄却した。