AI概要
【事案の概要】 本件は、音楽活動を行う原告が、音楽出版社である被告に対し、以下の2つの請求をした事案である。第1に、被告がJASRACに対し、原告が単独で作詞作曲した音楽作品について、筆名「B」がグループを表す筆名である旨記載した作品届を提出したことが、原告の著作者人格権(氏名表示権)及び著作者として取り扱われるべき人格的利益を侵害したとして、110万円の損害賠償を求めた。第2に、被告が一旦「B」を個人名に訂正する訂正届を提出したにもかかわらず、再びグループ名に戻す再訂正届を提出したことが、氏名表示権侵害及び著作権譲渡契約上の善管注意義務違反に当たるとして、110万円の損害賠償を求めた。原告は居酒屋を経営しており、同店で勤務していた元シンガーソングライターのCと共に音楽活動を行い、原告が作詞しCが作曲に関与した楽曲が著名歌手Eのアルバムに収録された経緯があった。 【争点】 1. 本件楽曲の著作者は原告単独か、原告とCの共同著作物か 2. 作品届の提出が原告の氏名表示権を侵害するか 3. 作品届の提出が著作者として取り扱われるべき人格的利益を侵害するか 4. 再訂正届の提出が氏名表示権又は人格的利益を侵害するか 5. 再訂正届の提出が著作権譲渡契約に基づく善管注意義務に違反するか 6. 損害額 【判旨】 裁判所は、原告の請求をいずれも棄却した。 争点1について、裁判所は、原告が初めて自らメロディーを作った本件原音声は3拍子の演歌調で単調なものであったところ、職業音楽家として豊富な経験を有するCが、3拍子を4拍子に変更し、サビ部分の旋律を見直し、伴奏を付け、全体的にボサノバ調に再構築して楽曲を完成させたと認定した。筆名「B」が原告の「a」、Cの「c」、居酒屋「D」の「d」を組み合わせたものであること、著作権使用料の分配割合(原告75%、C25%)等も踏まえ、本件楽曲は原告及びCの共同著作物(著作権法2条1項12号)に当たると判断した。 争点2について、「B」をグループ名として作品届に記載したことは誤りとはいえず、また、作品届のJASRACへの提出は「著作物の公衆への提供若しくは提示」(著作権法19条1項)に該当しないとして、氏名表示権侵害を否定した。 争点3について、原告の主張する人格的利益は氏名表示権と同質のものであり、届出内容に誤りも認められないとして、侵害を否定した。 争点4について、再訂正届の提出は著作権管理者として不適切であるとしつつも、届出内容自体に誤りがあるとは認められず、J-WID上の表示からも原告個人を表すか否かが不明になったとは認められないとして、侵害を否定した。 争点5について、原告が被告に対し個人名として「B」を使用する前提でJASRACへの管理委託を委ねたとは認められないとして、善管注意義務違反を否定した。