AI概要
【事案の概要】 本件は、「ゲームプログラム、ゲーム処理方法および情報処理装置」と題する特許出願について、拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした特許庁の審決の取消しを求めた訴訟である。原告はゲーム関連会社であり、被告は特許庁長官である。原告の発明は、ネットワークを介してプレイするゲームにおいて、一定期間ゲームをプレイしていない休眠ユーザを所定の条件(プレイ頻度・アイテム取得数・総プレイ時間等)に基づいて抽出し、メッセージを送信して復帰を促し、メッセージを受信した休眠ユーザがゲームに参加した場合に報酬を付与する機能を備えたゲームプログラムに関するものである。審決は、引用発明(MMOバトルシューティングゲーム「コズミックブレイク」のカムバックキャンペーン)との対比において、本願補正発明は進歩性を欠くとして補正を却下し、補正前の本願発明についても同様に進歩性を否定して請求を不成立とした。 【争点】 主な争点は以下の3点である。(1)本願補正発明と引用発明との一致点・相違点の認定の誤りの有無(取消事由1)。具体的には、引用発明における「ログイン」と本願補正発明の「ゲームをプレイ」は異なる概念であるため、相違点3(抽出条件の差異)及び相違点4(報酬付与条件の差異)が看過されたか。(2)相違点の容易想到性判断の誤りの有無(取消事由2)。相違点1のメッセージ「受信」と「送信」の区別が実質的相違点か否か、及び相違点2の抽出条件追加がゲーム分野と無関係な甲2(マーケティング記事)から容易想到といえるか。(3)審判手続における手続違背の有無(取消事由3)。拒絶査定で引用されていなかった甲2を本件審決で初めて用いた点につき、拒絶理由通知なく補正を却下したことの適法性。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、取消事由1につき、甲1における「ログイン」とは、ゲームのシステムに対して利用開始の宣言をすること及び当該宣言以降その利用が継続されている状態を意味すると解すべきであり、技術常識やキャンペーンの趣旨に照らして「ゲームをプレイ」と実質的に同義と解されるとして、相違点3・4の看過はないと判断した。取消事由2の相違点1については、本願明細書にメッセージを受信したユーザを特定し選び出す技術思想は開示されておらず、「受信した」は「送信」を受ける語として用いられているにすぎないとして、実質的相違点とはいえないとした。仮に実質的相違点であるとしても、メール開封確認は周知技術であり当業者が適宜なし得ると判断した。相違点2についても、休眠顧客のうち利用頻度の高かった者は復活しやすいとの周知事項は商品販売業界やマーケティング業界で広く認められ、引用発明に係る当業者もこれを踏まえて接するものであるから、所定頻度以上のプレイ等の条件を加えることは容易想到であるとした。取消事由3については、甲2は拒絶理由通知で引用されていた乙5の背景にある一般的な周知事項を明らかにしたものであり、改めて拒絶理由通知が行われなかったことは手続違背に当たらないと判断した。