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【事案の概要】 愛知県岡崎市八帖町で長年「八丁味噌」の名称を付した豆味噌の製造・販売を行う原告(株式会社まるや八丁味噌)が、農林水産大臣(被告・国)に対し、特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)12条1項に基づく登録処分の取消しを求めた行政訴訟である。農林水産大臣は、平成29年12月15日、愛知県味噌溜醤油工業協同組合(県組合)の申請に基づき、生産地を「愛知県」、名称を「八丁味噌」とする地理的表示の登録処分(本件処分)をした。原告が組合員である八丁味噌協同組合(八丁組合)は、先にこれとは別に生産地を「愛知県岡崎市八帖町」とする登録申請をしていたが取り下げており、本件処分に対し審査請求をしたが棄却された。その後、原告は令和3年9月17日に本件取消訴訟を提起した。本件では、原告が本件処分を知った平成29年12月16日頃から本件訴え提起まで約3年9か月が経過しており、行政事件訴訟法14条1項所定の出訴期間(処分を知った日から6か月)の遵守が問題となった。 【争点】 1. 出訴期間の遵守の有無(争点1-1):原告は、八丁組合がした審査請求は実質的に原告自身が行ったものと同視でき、行訴法14条3項の「審査請求をした者」に当たるため、本件裁決を知った日から6か月以内に提起した本件訴えは出訴期間を遵守していると主張した。 2. 出訴期間徒過についての「正当な理由」の有無(争点1-2):原告は、八丁組合の審査請求の裁決を待っていたこと、本件処分により「八丁味噌」の名称使用に重大な不利益を受けること等から、「正当な理由」があると主張した。 【判旨】 請求却下(訴え却下)。裁判所は、本案の争点(登録拒否事由の有無)について判断することなく、出訴期間の徒過を理由に本件訴えを不適法として却下した。 争点1-1について、裁判所は、本件審査請求をしたのは八丁組合であり、原告と八丁組合は別の法人格を有するから、原告が「審査請求をした者」に該当しないことは明らかであるとした。原告は八丁組合の審査請求中であっても自ら出訴期間内に取消訴訟を提起することができたのであるから、「正当な理由」がある場合に限り訴えを提起できると判示した。 争点1-2について、裁判所は、原告が主張する事情は八丁組合を構成する原告と合資会社八丁味噌の内部事情にすぎず、原告自身が出訴期間経過前に取消訴訟を提起しない判断をしたのであるから、「正当な理由」を基礎付ける事情とは認められないとした。さらに、原告は少なくとも平成31年2月1日から7年間は「八丁味噌」の表示を使用でき、その後も混同防止表示を付せば使用可能であること、また八丁組合が生産者団体の追加変更登録を受ければ何らの制限なく使用できることを指摘し、権利救済の必要性の観点からも原告の主張は採用できないと判断した。