特許権侵害差止等請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4ネ10015
- 事件名
- 特許権侵害差止等請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年6月29日
- 裁判官
- 本多知成、浅井憲、中島朋宏、紺野昭男
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 控訴人(特許権者)は、「イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤」とする特許の権利者であり、被控訴人ら5社(大原薬品工業、キョーリンリメディオ、杏林製薬、共創未来ファーマ、三和化学研究所)がそれぞれ製造・販売するジェネリック医薬品(プレガバリン製剤)が自己の特許権を侵害するとして、特許法100条1項・2項に基づき、製造・販売等の差止め及び廃棄を求めた事案である。原審(東京地裁)は控訴人の請求を全部棄却し、控訴人がこれを不服として控訴した。被告医薬品の効能・効果は「神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う疼痛」であり、本件特許の請求項はあらゆる「痛みの処置における鎮痛剤」を対象としていた。 【争点】 主な争点は、(1)本件特許(請求項1・2)の実施可能要件違反の有無、(2)訂正事項2に係る本件訂正(請求項2を「神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に限定する訂正)の適法性(新規事項追加の有無)、(3)本件訂正発明3・4の技術的範囲への被告医薬品の属否、(4)均等侵害の成否である。控訴人は、痛覚過敏や接触異痛は原因にかかわらず神経細胞の感作により生じるという技術常識が出願日当時に存在したと主張し、明細書記載の薬理試験(ホルマリン試験、カラゲニン試験、術後疼痛試験)の結果から神経障害性疼痛等への効果も当業者が理解できたと主張した。 【判旨】 知財高裁は、原判決を維持し、控訴をいずれも棄却した。まず、実施可能要件について、医薬用途発明では、当該物質が当該用途に使用できることにつき薬理データ又はこれと同視し得る程度の事項を明細書に記載する必要があるとした上で、本件明細書にはホルマリン試験・カラゲニン試験・術後疼痛試験の薬理データが記載されているものの、出願日当時、慢性疼痛が全て神経細胞の感作により生じるとの技術常識は存在しなかったと認定し、これらの試験結果からあらゆる「痛み」への効果を当業者が理解できたとはいえないとして、実施可能要件違反を認めた。次に、訂正事項2について、本件明細書には本件化合物が神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏・接触異痛に効果を奏する旨の明示の記載がなく、出願日当時の技術常識を考慮しても記載されているに等しいとはいえないから、新たな技術的事項を導入するものであり、新規事項の追加に当たるとして訂正を認めなかった。さらに、訂正発明3・4についても、「炎症を原因とする痛み」「手術を原因とする痛み」は神経障害性疼痛・線維筋痛症に伴う痛みを含まないと解し、被告医薬品の構成は技術的範囲に属しないとした。均等侵害の主張も、用途が本質的に異なるとして退けた。