損害賠償請求控訴事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 政府の国家戦略特区ワーキンググループ(特区WG)の座長代理を務める控訴人が、被控訴人(毎日新聞社)の発行する毎日新聞の令和元年6月11日付け朝刊に掲載された記事により名誉を毀損されたとして、不法行為に基づく損害賠償1100万円(慰謝料1000万円、弁護士費用100万円)を請求した事案の控訴審である。問題となった記事は、控訴人と協力関係にあるコンサルタント会社(特区ビズ社)が特区提案者である学校法人から200万円のコンサルタント料を受領していたこと、及び控訴人が学校法人の費用負担で福岡市内の料理店で会食したことなどを報じるものであった。原審は控訴人の請求を全部棄却したため、控訴人が控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)控訴人自身が指導料を受領したとの事実が摘示されているか(争点1)、(2)控訴人が学校法人の費用負担で会食したとの事実摘示等による名誉毀損の成否(争点2)、(3)損害額(争点3)であった。争点1については、記事が控訴人個人への金銭の流れを摘示しているか、また専門家コメント中の「収賄罪に問われる可能性」との表現が控訴人による賄賂授受を前提としているかが争われた。争点2については、平成26年及び平成27年の2回の会合における会食費用を学校法人が負担したとの事実について、真実性及び真実と信じる相当の理由の有無が争われた。 【判旨】 東京高裁は、原判決を変更し、220万円(慰謝料200万円、弁護士費用20万円)の支払を命じた。争点1について、裁判所は、一般読者の普通の注意と読み方を基準とすれば、記事は特区ビズ社がコンサルタント料を受領した事実を摘示したものであり、控訴人個人が直接又は間接にコンサルタント料を受領したとの事実を摘示したものとは認められないと判断した。専門家コメントについても、控訴人がコンサルタント料を受領していたとの事実自体を前提にしているとは認められないとした。争点2について、裁判所は、記事が1面記事と26面記事を関連付けて読まれることを前提に、2回の会食の費用を学校法人が負担したとの事実を摘示したものと認定した。その上で、平成26年の会合については会食の事実自体が認められず、平成27年の会合については会食の事実は認められるものの費用を学校法人が負担した事実の真実性は証明されていないと判断した。さらに、取材記録の分析から、記者が費用負担について十分な裏付け取材をしていなかったとして、真実と信じる相当の理由も否定し、名誉毀損の不法行為の成立を認めた。