AI概要
【事案の概要】 本件は、発明の名称を「車両誘導システム」とする2件の特許権(本件特許1及び2)を有する控訴人(原審原告)が、被控訴人(東日本高速道路株式会社)に対し、同社が佐野SAスマートICに設置・使用する車両誘導システム(被控訴人システム1~4)が上記各特許権を侵害すると主張して、特許法102条3項に基づく実施料相当額の損害賠償等を求めた事案の控訴審である。本件各特許は、有料道路のETC車用出入口において、ETCによる料金徴収ができない車両が進入した場合に、複数の遮断機や検知手段を用いて車両を安全に第2のレーン(再進入レーン)へ誘導し、逆走防止や後続車との衝突回避を図る車両誘導システムに関する発明である。原審(東京地裁)は、被控訴人各システムが本件特許の技術的範囲に含まれないとして請求を棄却したため、控訴人が控訴するとともに、当審で請求を約1億3437万円に拡張した。 【争点】 主な争点は、(1)被控訴人各システムの技術的範囲への属否(第1の遮断機と通信手段の位置関係、「第2のレーンへ誘導する誘導手段」に係員の人的操作が含まれるか等)、(2)明確性要件違反の有無、(3)乙35発明に基づく進歩性欠如の有無、(4)分割要件違反を前提とする新規性欠如等の有無、(5)サポート要件違反の有無、(6)損害額であった。 【判旨】 控訴審は原判決を取り消し、約2693万円の損害賠償を認容した。まず技術的範囲の属否について、特許請求の範囲には通信手段と第1の遮断機の位置関係を特定する記載がなく、明細書記載の実施例に限定して解釈すべき理由はないとして、被控訴人各システムにおいて通信手段が第1の遮断機の手前に配置されていても構成要件を充足すると判断した。また「第2のレーンへ誘導する誘導手段」についても、自動誘導に限定する記載はなく、係員の人的操作により開閉バーを開く構成であっても、インターホンで係員を現地に呼び出す必要がなく前進走行で退避できるのであれば、本件各発明の課題を解決し作用効果を奏するとして充足を認めた。無効の抗弁については、乙35発明との相違点(第1の検知手段に対応する第1の遮断機の存在)について、高速道路のETCレーンに進行方向で2つの遮断機を設けることが周知技術であったとは認められないとして進歩性欠如を否定し、分割要件違反についても拒絶査定の理由は分割要件違反ではなかったと認定して排斥した。損害額については、車両1台当たりの売上げを245円(ターミナルチャージ75円+走行距離料金170円)とし、実施料率を2%と認定して、弁護士費用250万円を含む合計約2693万円を認容した。