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【事案の概要】 被告人は、金品を奪おうと考え、令和3年9月19日午前11時10分頃、北海道苫小牧市内の住宅地において、徒歩で通行中の被害者(当時73歳の女性)に対し、いきなり左肩付近を手で押して転倒させた上、被害者が所持していたトートバッグをつかんで引っ張り、さらに所持していたコンビネーションレンチ(全長約29cm)で被害者の右手等を複数回殴打する暴行を加え、その反抗を抑圧してバッグを奪い取ろうとしたが、通行人に発見されたため目的を遂げなかった。この暴行により、被害者は加療約1か月間を要する右第4中手骨骨折等の傷害を負った。被告人は犯行後、犯行現場の南東方向に位置する公園付近で警察官から職務質問を受け、任意同行された。裁判員裁判で審理された事案である。 【争点】 本件の争点は、被告人が犯人であるか否か(犯人性)である。被告人は、犯行当時は自宅でテレビを見ていたとアリバイを主張した。弁護人は、被告人が所持していたコンビネーションレンチから被害者のDNA型が検出されていないことや、被告人に強盗をしてまで金銭を必要とする事情がないことを指摘し、犯人性を争った。これに対し、検察官は、犯行現場付近の捜査用カメラや防犯カメラの映像に映った人物と被告人の特徴の一致、被告人が凶器と合致するレンチを所持していたこと等から、被告人が犯人であると主張した。 【判旨(量刑)】 裁判所は、以下の理由から被告人が犯人であると認定した。まず、犯行現場付近のカメラに映った3人の人物(走って逃走する人物、徒歩の人物、自転車に乗った人物)は、服装・所持品の類似性や時間的・場所的近接性から同一人物と認定した。次に、被害者の証言と照合し、この人物が犯人であると認定した。そして、犯人の特徴(茶色のつば付き帽子、白色マスク、サングラス、黒色系フード付きジャンパー、白色靴、自転車の形状等)が被告人と細部にわたり合致すること、特に自転車に乗りながらスパナを単体で所持する者は極めて少ないことから、被告人が犯人であると強く推認されるとした。レンチからDNA型が検出されなかった点は、出血量が少なく付着しないことがあり得るとして排斥した。アリバイ主張についても、パチンコ店の防犯カメラに被告人と同一の特徴を持つ人物が犯行前の時間帯に映っており、自宅にいたとの供述は信用できないとした。量刑については、高齢女性をいきなり押し倒しレンチで殴打した態様は危険で短絡的であること、被害者が骨折という重傷を負い多大な精神的苦痛を受けたこと、経済的困窮を理由に強盗に及んだ動機は身勝手で酌量の余地がないことを指摘し、20年余り前科がなく平穏に生活してきたことや高齢であることも考慮した上で、求刑懲役8年に対し、懲役6年を言い渡した。