特許権侵害差止請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4ネ10026
- 事件名
- 特許権侵害差止請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年7月11日
- 裁判官
- 本多知成、浅井憲、中島朋宏、泉谷玲子、実広信哉
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 控訴人(ワーナー・ランバート社)は、「イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤」に関する特許権を有しており、被控訴人ら(武田テバファーマ及び武田薬品)が神経障害性疼痛及び線維筋痛症を効能・効果とする医薬品(プレガバリンのジェネリック医薬品)を製造・販売する行為が本件特許権を侵害するとして、特許法100条1項及び2項に基づき、被告医薬品の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めた事案である。原審(東京地裁)は控訴人の請求を全部棄却し、控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 主な争点は、(1)本件発明1及び2に係る特許が実施可能要件(特許法36条4項)及びサポート要件(同条6項1号)に違反するか、(2)本件訂正(請求項2につき処置対象の痛みを「神経障害又は線維筋痛症による、痛覚過敏又は接触異痛の痛み」に限定する訂正)が新規事項の追加に当たるか、(3)被告医薬品が本件訂正発明3及び4の技術的範囲に属するか、(4)均等侵害の成否である。 【判旨】 知財高裁は原判決を維持し、控訴を棄却した。まず、医薬用途発明における実施可能要件について、当業者が過度の試行錯誤なく当該発明に係る物を使用できる程度の記載が必要であり、医薬用途発明では薬理データ又はこれと同視できる程度の事項の記載が求められると判示した。本件明細書に記載されたホルマリン試験、カラゲニン試験及び術後疼痛試験の結果からは、本件化合物が侵害受容性疼痛(炎症性疼痛・術後疼痛)に有効であることは理解できるものの、神経障害性疼痛や心因性疼痛(特発性疼痛)に対しても有効であると当業者が理解することは困難であったとし、あらゆる「痛み」の処置における鎮痛剤としての実施可能要件及びサポート要件に違反すると判断した。次に、請求項2に係る訂正については、本件化合物が神経障害又は線維筋痛症による痛覚過敏又は接触異痛の痛みの処置に効果を奏することが明細書から導かれないため、新規事項の追加に当たり許されないとした。さらに、本件訂正発明3及び4についても、「炎症を原因とする痛み」及び「手術を原因とする痛み」には神経障害性疼痛又は線維筋痛症に伴う痛みは含まれないと解し、被告医薬品は技術的範囲に属しないと判断した。均等侵害の主張についても、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛等では機序及び治療方法が異なることから、本質的部分の相違があるとして退けた。