特許権侵害差止請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4ネ10036
- 事件名
- 特許権侵害差止請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年7月13日
- 裁判官
- 本吉弘行
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 本件は、「イソブチルGABAまたはその誘導体を含有する鎮痛剤」とする発明に係る特許権(本件特許権)を有する控訴人(ワーナー-ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー)が、被控訴人ら(ダイト株式会社及び科研製薬株式会社)に対し、被控訴人らが製造・販売する医薬品(プレガバリンを有効成分とする神経障害性疼痛・線維筋痛症治療薬)が本件特許権を侵害すると主張して、特許法100条1項及び2項に基づき、被告医薬品の製造・販売等の差止め及び廃棄を求めた事案の控訴審である。原審(東京地裁)は、本件発明1及び2について実施可能要件・サポート要件違反を認め、また被告医薬品は本件発明3及び4の技術的範囲にも属しないとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。 【争点】 主な争点は、(1)本件発明1及び2について実施可能要件違反・サポート要件違反が成立するか、本件訂正が訂正要件を満たすか、(2)被告医薬品が本件発明3及び4の技術的範囲に属するか(文言侵害の成否)、(3)均等侵害の成否である。控訴人は、痛覚過敏や接触異痛は原因を問わず神経細胞の感作により生じるとの技術常識があり、ホルマリン試験等は神経障害性疼痛の治療薬探索にも利用可能であったと主張した。また、被告医薬品の適応症である神経障害性疼痛等と本件発明の炎症性疼痛・術後疼痛は区別できない痛みであるとも主張した。 【判旨】 知財高裁は、控訴をいずれも棄却した。まず実施可能要件について、医薬用途発明では明細書に薬理データ又はこれと同視し得る程度の記載が必要であるところ、本件明細書に記載された3種の薬理試験(ホルマリン試験・カラゲニン試験・術後疼痛試験)はいずれも炎症性疼痛又は術後疼痛に関する試験であり、神経障害性疼痛及び線維筋痛症に伴う痛みに関するものとは理解されないと判断した。控訴人が主張する技術常識(中枢神経に作用する薬剤であれば原因を問わず痛覚過敏等に効果を奏する等)についても、提出された文献によってもかかる技術常識の存在は認められないとした。次に文言侵害について、本件発明3及び4の処置対象は炎症性疼痛又は術後疼痛であり、訂正の経緯からも神経障害性疼痛等を除外したことは明らかであるから、効能効果を「神経障害性疼痛、線維筋痛症に伴う疼痛」とする被告医薬品は技術的範囲に属しないとした。均等侵害についても、処置対象の痛みを神経障害性疼痛等に置換することは本質的部分の置換に当たり、均等の第1要件を満たさないと判断した。