AI概要
【事案の概要】 本件は、菓子「チロリアン」の商標権者である原告(株式会社千鳥饅頭総本舗)が、被告(株式会社千鳥屋宗家)の有する商標「ザリッチチロリアン」(商標登録第6199438号、指定商品:第30類「菓子、パン」等)について、商標法4条1項7号、11号、15号及び19号に該当するとして商標登録無効審判を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたため、その取消しを求めた審決取消訴訟である。 菓子「チロリアン」は、昭和37年に福岡の老舗菓子屋「千鳥屋」で販売が開始されたクリーム入りロールクッキーであり、創業家の兄弟がそれぞれ東京・大阪・福岡で独立して「千鳥屋」を営み、各社が菓子「チロリアン」を製造販売してきた。平成7年に先代が死亡した後、兄弟間で事業を巡る紛争が多発し、原告は引用商標「チロリアン」等の商標権を譲り受けた経緯がある。 【争点】 主な争点は、本件商標「ザリッチチロリアン」が引用商標「チロリアン」と類似するか(商標法4条1項11号該当性)であり、具体的には、結合商標である本件商標から「チロリアン」の文字部分を要部として抽出して類否判断を行うことが許されるかが中心的に争われた。 【判旨】 知財高裁は、審決を取り消した。裁判所はまず、結合商標の類否判断について、構成部分の一部が取引者・需要者に対し「強く支配的な印象を与える」場合のほか、「相当程度強い印象を与え、独立して出所識別標識として機能し得る」場合にも要部抽出が許されると判示した。そのうえで、標章「チロリアン」は本件商標の登録審決日時点で、九州地方を中心に菓子のブランド名として広く認識され全国的にも相当程度認識されていたと認定した。また、「ザ」は定冠詞theの片仮名表記、「リッチ」は「裕福な」等の意味を有する語、「チロリアン」は「チロル風の」等の意味を有する語であり、各文字部分の観念及び称呼に照らすと不可分的に結合しているとは認められないとした。したがって、本件商標から「チロリアン」の文字部分を要部として抽出することは許されるとし、要部「チロリアン」と引用商標1「チロリアン」は外観・称呼・観念のいずれにおいても共通又は同一であるから、本件商標は引用商標1に類似し、商標法4条1項11号に該当するとして、審決を取り消した。