特許権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、「電鋳管の製造方法及び電鋳管」に関する特許権(特許第3889689号)を有する原告(株式会社ルス・コム)が、被告(株式会社ナンシン)に対し、被告が使用する電鋳管の製造方法(被告方法1〜3)及び被告製品が原告の特許発明の技術的範囲に属するとして、特許法100条に基づく差止め・廃棄、並びに民法709条及び特許法102条2項に基づく約12億3500万円の損害賠償を請求した事案である。電鋳管とは、ステンレス製の細線材の外周に金の導電層を設け、その上にニッケルの電着物を電鋳により形成した後、細線材を引き抜いて製造される微細な金属管であり、マイクロチューブとして産業上利用される。 【争点】 主な争点は、(1)被告方法1・2が本件発明の構成要件を充足するか(特に「細線材を一方または両方から引っ張って」変形させる要件、「細線材を掴んで引っ張って除去」する要件、「導電層は金」の要件)、(2)本件特許の無効理由の有無(実施可能要件違反、サポート要件違反、進歩性欠如、明確性要件違反)、(3)消滅時効の成否、(4)損害額である。 【判旨】 裁判所は、本件発明1・5(製造方法の発明)について、被告方法1・2が技術的範囲に属すると判断した。構成要件の「引っ張って」とは、細線材の断面積が小さくなるよう両端に反対方向の力を加えることを意味し、直接・間接を問わないと解釈した。被告方法はメッキ層越しにクラックを入れた上で引っ張る方法であるが、結果として細線材に反対方向の力が加わり断面積が小さくなっているため、構成要件を充足するとした。「導電層は金」についても、被告が使用する金-コバルト合金(金99.7%)は電気伝導率において純金との有意な差がなく、充足すると判断した。実施可能要件違反、サポート要件違反、進歩性欠如の主張もいずれも退けた。一方、本件発明6・9(物の発明)については、特許請求の範囲に製造方法が記載されているにもかかわらず、物の構造・特性を直接特定できない事情が認められないとして、明確性要件に違反し無効とした。消滅時効の主張は、被告が被告方法を使用していたことを原告が知っていたとは認められないとして排斥した。損害額については、特許法102条2項に基づき被告の利益額を算定し、人件費や工具類の控除を否定するなどした上で、推定覆滅も認めず、約10億865万円の損害賠償を認容した。