保護責任者遺棄致死
判決データ
AI概要
【事案の概要】 被告人(母親)は、夫Aとともに三男である被害者(当時1歳)を監護養育していたが、被害者は平成30年10月下旬頃までに重度の低栄養状態に陥り極度に痩せ細って衰弱した。同年11月上旬頃以降、両手足の骨や肋骨の計23本・31か所が骨折し、さらにAが多数回にわたりエアソフトガンのBB弾を命中させる暴行を加え、全身71か所に円形の傷を負わせた。同月下旬頃には蜂窩織炎を発症して右腕・左膝が広範囲に腫れ上がり、免疫力も著しく低下していた。被告人及びAは、この要保護状態を認識しながら医師による診察・治療を受けさせず、12月1日、被害者は重度の低栄養等に基づく肺感染症による急性呼吸不全で死亡した。原審は保護責任者遺棄致死罪で有罪とし、被告人が事実誤認を理由に控訴した。 【争点】 被告人が被害者の要保護状態を認識していたか(保護責任者不保護の故意の有無)。被告人は「死亡前日まで普通に食事や動作をしており、異常には全く気付かなかった」と供述し、軽度知的障害(IQ58)や自閉スペクトラム症の特性、夫からのDVの影響により認識できなかった可能性を主張した。 【判旨(量刑)】 控訴棄却。原判決の認定・判断は論理則・経験則等に照らし不合理ではないと是認した。①動機が認定できないことは故意を否定する理由にならない、②被告人が虐待の事実を隠す目的で保護行為をしなかったとしても、死に直面して慌てて119番通報することは不合理ではない、③11月下旬頃の被害者の状態は全身の円形の傷・蜂窩織炎による腫れ・極度の衰弱など一見して明らかに異常であり、同居する主たる監護者であれば当然認識できた、④被告人は他の子どもの発熱時には医師の診察を受けさせており、介護職員としても適切に業務をこなしていたことから、軽度知的障害があっても要保護状態に気付けなかった可能性は認められないと判断した。