AI概要
【事案の概要】 金融商品取引法違反等で起訴され保釈中に不法出国した被告人Jに対する入管法違反被疑事件等につき、東京地方検察庁の検察官らが、Jの弁護人らが所属する法律事務所に対し捜索差押許可状に基づく捜索・差押えを実施した。弁護士らは刑訴法222条1項が準用する同法105条に基づき押収拒絶権を行使して捜索を拒絶したが、検察官らは非常用出入口を開錠して事務所内に立ち入り、約3時間にわたる捜索を行った。弁護士ら及び法律事務所(原告ら)が、この捜索等が違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づき各33万円の損害賠償を求めた事案である。 【争点】 (1) 押収拒絶権の行使により捜索の必要性・許容性が失われたか、(2) 検察官らに故意又は過失が認められるか、(3) 損害額。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、押収拒絶権の趣旨から「秘密」には委託者と弁護士間の委託の趣旨において秘密とされたものも含まれ、秘密該当性の判断は第一次的に弁護士に委ねられるとした上で、本件許可状記載の差押対象物について個別に検討した。面会記録及びPCログ記録については、既に裁判所に提出済みで検察官も閲覧・謄写可能であったから捜索の必要性がなく、未提出分についても押収拒絶権の行使により捜索は許されないとした。事件関係者の残置物についても、来訪者と法律事務所間に委託関係に類似した関係が生じるとして押収拒絶権の保障が及ぶと判断した。以上から、本件捜索等は刑訴法218条1項又は押収拒絶権の趣旨に違反すると認定した。しかし、国賠法上の違法性については、残置物に押収拒絶権が及ぶことが条文の文理上明白とまではいえず、当時これを明確に指摘した文献や裁判例も存しなかったことから、検察官らの法令解釈が職務上通常尽くすべき注意義務に違反したとはいえないとして、国賠法上の違法は否定した。