不正競争行為差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 釣り用のうき(棒うき)の製造販売を業とする原告(有限会社トオヤ)が、同じく釣り用のうきを製造販売する被告(有限会社財津釣具)に対し、被告商品「Sai」シリーズ5種の販売が不正競争防止法2条1項1号の不正競争に該当するとして、差止め・廃棄及び損害賠償金386万円の支払を求めた事案である。原告は、自社の「遠矢グレ」シリーズ(原告商品1〜9、ZF形態)及び「遠矢グレスペシャル」シリーズ(原告商品10・11、SP形態)について、木製黒色ボディ下部の膨らみ、ボディ上部の黄白色樹脂塗装、ボディ上部の黒色ゴム管等の形態的特徴が、不正競争防止法上の周知な商品等表示に該当すると主張した。原告代表者は昭和50年代から「遠矢うき」を製造販売する著名な釣り名人であり、原告商品は釣り専門雑誌等で多数紹介されてきた。被告は平成25年以降、原告商品と類似する形態の「Sai」シリーズを順次発売した。 【争点】 主な争点は、(1)原告商品の形態の商品等表示該当性(特別顕著性の有無)、(2)原告商品の形態の周知性、(3)原告商品と被告商品の形態の類否、(4)混同の有無、(5)損害額、(6)差止め・廃棄の必要性の6点である。原告は、ZF形態及びSP形態は他社製品にない独自の形態であり、長期間の独占的使用と宣伝広告により周知性を獲得したと主張した。被告は、原告が主張する各形態的特徴はいずれもありふれたものであり、原告商品の発売以前から複数のメーカーが同様の特徴を備えた棒うきを販売していたと反論した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、商品の形態が不正競争防止法2条1項1号の商品等表示に該当するためには、客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴(特別顕著性)を有し、かつ、特定の事業者によって長期間独占的に利用されるなどして周知性を備える特段の事情が必要であるとの判断基準を示した。その上で、釣り用のうきは専ら釣果を得るための実用品であり、需要者は経験や評判、価格を参考に選択するものであるから、ボディの形態に特別顕著性があるためには他のうきとかけ離れた特異な形態であることが必要であるとした。そして、ZF形態の各特徴(黒色ボディ下部の膨らみ、黄白色の樹脂塗装、ゴム管等)の1つ又は2つを備えた棒うきが原告商品発売以前から各メーカーにより複数種類販売されており、SP形態もZF形態のバリエーションにすぎないとして、いずれも特別顕著性を認めなかった。周知性についても、原告商品の販売数量が最盛期の3分の1以下に激減していたこと、海用うき市場規模約7億円に対し原告の販売額が年間数百万円にすぎないこと、全国的なマスメディアによる宣伝広告がなかったことを指摘し、周知性も否定した。さらに、原告代表者の著名性についても、仮に著名であるとしても、需要者は「遠矢うき」の名称で識別しているのであって形態自体が周知とはいえないとした。