未払賃金請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3行コ270
- 事件名
- 未払賃金請求控訴事件
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年8月25日
- 裁判種別・結果
- 棄却
- 裁判官
- 矢尾渉、橋本英史、今井和桂子
- 原審裁判所
- さいたま地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 埼玉県a市立小学校の教員である控訴人が、平成29年9月から平成30年7月までの間に時間外労働を行ったとして、被控訴人(埼玉県)に対し、主位的に労働基準法37条に基づく時間外割増賃金242万2725円及び遅延損害金の支払を、予備的に国家賠償法1条1項・3条1項に基づく同額の損害賠償の支払を求めるとともに、労基法114条に基づく付加金242万2725円及び遅延損害金の支払を求めた事案の控訴審である。原審は控訴人の請求をいずれも棄却し、控訴人がこれを不服として控訴した。 【争点】 1. 労基法37条の適用の有無(給特法による適用排除の可否) 2. 控訴人の時間外労働について国賠法上の違法性が認められるか、及び損害額 【判旨】 控訴棄却。原判決の結論を維持した。 争点1について、裁判所は、教員の職務は自発的で創造性のある勤務によるところが大きく、どの程度の時間と密度で業務を行うかは個々の教員が自らの知識や経験等を踏まえ教育上の創造性を発揮しながら判断するものであり、正規の勤務時間の内外を通じた勤務全体を定量的に計測することが極めて困難であると判示した。給特法は、こうした教員の職務と勤務態様の特殊性に鑑み、正規の勤務時間や法定労働時間の内外を問わず職務活動を包括的に評価した対価として教職調整額(給料月額の4%)を支給し、労基法37条の時間外割増賃金の適用を排除したものであり、その制定趣旨は本件請求期間においても失われていないとして、労基法37条に基づく請求を認めなかった。 争点2について、裁判所は、本件校長が控訴人に対し時間外勤務を命じたこと又はそれと同視できるほど自由意思を強く拘束する形態での時間外事務等をさせたことを認めるに足りる証拠はないとした上で、念のため労働時間該当性が認められる場合についても検討した。正規の勤務時間内の児童下校後の時間や音楽・書写の時間を「空き時間」として事務作業に充てることができたと認定し、時間外勤務の時間数を概算しても、労基法上の労働時間であるからといって当然に賃金請求権が発生するものではなく、給特法の適用を受ける教員の場合には直ちに賃金相当の損害金が生ずるものとはいえないと判断した。控訴人の法律上保護される権利利益が違法に侵害されたと認めることは困難であるとして、国賠法上の違法性も否定した。