国家賠償請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、喫煙の習慣を有する原告が、平成30年法律第78号による改正後の健康増進法29条1項2号及び30条の規定(本件規定)が、喫煙者の「喫煙を楽しみながら飲食を行う自由」を一律に制限する点で憲法13条及び14条1項に違反するものであり、本件規定に係る立法行為(本件立法行為)によって精神的苦痛を被ったと主張して、国に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料200万円及び遅延損害金の支払を求めた国家賠償請求事件である。本件規定は、飲食店を含む第二種施設において、喫煙専用室及び喫煙関連研究場所を除き喫煙を禁止するものであり、紙巻きたばこの喫煙者は喫煙専用室内での飲食ができないこととされている。原告は専ら紙巻きたばこを喫煙する成人男性であった。 【争点】 1. 本件規定の憲法適合性(争点1):本件規定が喫煙者の「喫煙を楽しみながら飲食を行う自由」を制限する点で憲法13条に違反するか、また非喫煙者と喫煙者を差別的に取り扱う点で憲法14条1項に違反するか。原告は、喫煙専用店舗の設置を認めるなどのより制限的でない手段(LRAの基準)が存在すると主張した。 2. 本件立法行為の国家賠償法上の違法性(争点2):国会が本件規定を立法した行為が国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されるか。 3. 本件立法行為によって原告に生じた損害の有無及び額(争点3)。 【判旨】 裁判所は、原告の請求を棄却した。憲法13条適合性について、裁判所は、受動喫煙が肺がんや脳卒中等の重篤な疾患との因果関係を推定するに十分な科学的根拠があり、年間約1万5000人が受動喫煙に起因して死亡していると推計されることから、望まない受動喫煙を防止するために喫煙に対し一定の場所的制限を課す必要性は高いとした。他方、たばこは生活必需品とはいい難く嗜好品にすぎず、喫煙の制限は人体に直接障害を与えるものではないから、喫煙の自由はあらゆる場所において保障されなければならないものではないとした。その上で、本件規定は多数の者が利用する施設のみを対象とし、自宅等の私的空間や屋外は規制対象外であること、加熱式たばこや既存の小規模飲食店については例外措置が設けられていること等を踏まえ、制限の必要性の程度と具体的な制限の態様を総合考慮すれば、本件規定による喫煙の場所的制限は必要かつ合理的であり、憲法13条に違反しないと判断した。原告が主張する喫煙専用店舗の設置という代替手段についても、受動喫煙の防止という目的に沿った規制内容とはおよそ認め難いとして退けた。憲法14条1項適合性についても、本件規定は喫煙者・非喫煙者の別なく喫煙を禁止するものであり、法的な差別的取扱いには当たらないとして、違憲の主張を排斥した。