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【事案の概要】 香川県議会が制定した「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」(令和2年4月1日施行)が、憲法13条、14条1項、21条1項、22条、26条、29条、31条、94条及び児童の権利条約に違反するにもかかわらず、同県議会が同条例を制定した違法及び同条例の改廃等の立法措置を講じなかった違法により精神的苦痛を被ったとして、香川県高松市に居住する原告A(母親)及び原告B(条例施行当時17歳の息子)が、被告(香川県)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ慰謝料80万円の支払を求めた事案である。同条例は、18歳未満の子どものスマートフォン等の使用について、保護者に子どもとの話し合いやルールづくりを求め、コンピュータゲームの利用時間を1日60分(休業日90分)まで、スマートフォン等の使用を義務教育修了前は午後9時まで、それ以外は午後10時までとする目安を示し、保護者にルール遵守の努力義務を課すものである。なお、原告らは訴訟提起後、代理人弁護士の辞任を経て訴えを取り下げたが、被告が取下げに同意せず、弁論終結に至った。 【争点】 主な争点は、(1)本件条例の各規定が明確性の原則に反し憲法21条・31条に違反するか、(2)本件条例が憲法94条(条例制定権の範囲)に違反するか、(3)立法目的の正当性及び目的と手段の実質的関連性が認められるか、(4)本件条例が憲法14条1項(平等原則)に違反するか、(5)本件条例が憲法21条1項(表現の自由)、22条(職業選択の自由)、26条(教育を受ける権利)、29条(財産権)、13条(幸福追求権)にそれぞれ違反するか、(6)原告らの主張する各人権が基本的人権として保障されているか、である。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず明確性の原則について、文言の明確性は規定ぶりのみから判断すべきであるとし、原告らが指摘する各文言はいずれも一般人が容易に意味・内容を判断できるものであり、明確性を欠くものではないとした。憲法94条違反については、国がネット・ゲーム依存症対策に関する法律の制定を排除しているとは認められず、子ども・若者育成支援推進法も同趣旨の目的を有するとして、本件条例は法律の範囲内で制定されたものと判断した。立法目的と手段の関連性については、過度のネット・ゲーム使用が青少年の健康・社会生活に弊害をもたらす可能性は複数の医学的知見から認められ、香川県においてもその予防の必要性が認められるとして、立法目的の正当性を肯定した。手段についても、本件条例18条は保護者に子どもとの話し合いやルールづくりを求めるものであり、利用時間の定めは保護者が子どもと話し合った上で自ら定めるよう求める努力目標にすぎず、医師らの予防に関する見解にも沿うものであるとして、目的と手段の実質的関連性を認めた。その他の憲法違反の主張についても、本件条例は努力目標であり罰則もなく、原告らの権利に具体的な制約を課すものではないとしていずれも排斥し、本件条例の立法行為及び改廃をしない立法不作為は国家賠償法1条1項の違法に当たらないと結論づけた。