商標権侵害差止等請求事件
判決データ
AI概要
【事案の概要】 本件は、墓石・石材業を営む原告(株式会社丸忠山田)が、同じく墓石・石材業を営む被告(有限会社つぎ館丸忠山田石材店)に対し、(1)被告による各被告標章(丸で囲んだ「忠」の文字等)の使用が原告の有する3件の商標権(本件商標権1〜3)を侵害するとして、商標法36条に基づく差止め及び損害賠償852万5000円の支払、(2)被告の商号「有限会社つぎ館丸忠山田石材店」が原告と誤認されるおそれがあるとして、会社法8条2項に基づく商号使用の差止め及び商号変更登記の抹消登記手続を求めた事案である。 原告・被告はいずれも、大正12年頃に東京都府中市の多磨霊園正門前で「山田石材店」を創業した祖父(C)の孫が経営する会社であり、原告代表者はCの長男の子、被告代表者はCの三男の子という親族関係にある。被告は昭和39年にCの子らが出資して設立され山田石材店の業務を引き継いだ会社であり、創業以来、丸で囲んだ「忠」の文字や「つなぎ館」等の標章を継続して使用してきた。一方、原告は昭和57年に設立され、当初は主に造園建設業を営んでいたが、平成17年頃から墓石・石材の販売等を行うようになった。 【争点】 主な争点は、(1)被告が本件各商標の指定役務に類似する役務に本件各商標に類似する各被告標章を使用しているか(争点1〜3)、(2)各被告標章が被告の名称の普通の方法による表示か(争点4)、(3)登録商標の使用に当たるか(争点5)、(4)原告の損害額(争点7)、(5)原告の本件各商標権に係る各請求が権利濫用に当たるか(争点8)、(6)被告が不正の目的をもって原告と誤認されるおそれのある商号を使用しているか(争点9)である。裁判所は事案に鑑み、まず争点8(権利濫用)から検討した。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、丸で囲んだ「忠」の文字や「つなぎ館」「山田石材店」等の標章は、山田石材店及び被告において大正12年頃から長年にわたり多磨霊園の近隣で墓石の販売・設置等の業務に使用され、一定の信用が蓄積されてきたものであると認定した。その上で、原告代表者は被告に関係する者であり、被告の使用する標章やその使用状況を知っていたと認められること、原告が本件各商標を商標登録出願した当時、これらの商標を各指定商品又は各指定役務について使用していたことを認めるに足りる証拠がないこと、原告は被告の創業者から続く事業すなわち被告の事業を承継するためと主張して被告が長年使用してきた標章に類似する商標を出願したものであること等を指摘し、被告による標章使用の状況、原告と被告との関係、原告の商標登録出願に至る経緯等に照らせば、仮に被告が本件各商標の指定役務に類似する役務に類似する各被告標章を使用するものであったとしても、権利の濫用に当たると判断した。また、商号に関する請求についても、被告が太平洋戦争前後から長年にわたり「丸忠」等の表示を使用してきた経過に照らし、被告が不正の目的をもって原告と誤認されるおそれのある商号を使用しているとは認められないとして、原告の請求をいずれも棄却した。