AI概要
【事案の概要】 本件は、「ひとり親支援法律事務所」を営む弁護士である原告が、Twitter上で複数のアカウントを用いて原告に関する投稿を繰り返していた被告に対し、損害賠償100万円及び遅延損害金、ウェブページの削除、並びに被告が作成したツールによる原告ツイートの複製・公衆送信の差止めを求めた事案である。原告の主張は大きく3つに分かれる。第一に、被告がTwitterに投稿した記事(計70件)が原告に対する名誉毀損、侮辱、脅迫に当たるというものである。具体的には、原告が女子大生13人と寿司職人を自宅に招いた会合の写真をきっかけに、被告が原告を「パパ活」「パパA₃」「ガムテ弁護士」「底辺」等と呼称する投稿を繰り返したこと、第三者による「徹底的に潰します」等の投稿をリツイートしたことが問題とされた。第二に、原告が作成した発信者情報開示請求書及び開示請求訴状を被告がインターネット上で公開したことが、複製権・公衆送信権・公表権・プライバシー権の侵害に当たるというものである。第三に、被告が作成したツールを用いて原告のツイートを収集・表示したことが複製権・公衆送信権・同一性保持権の侵害に当たるというものである。 【争点】 (1) 本件各投稿による名誉毀損の成否(「パパ活」等の記載が原告の社会的評価を低下させるか)、(2) 侮辱の成否(「ガムテ」「底辺」「自称弁護士」等の呼称、「こいつが巻き込まれればいいのに」等の表現が受忍限度を超えるか)、(3) 脅迫の成否(第三者の「社会的に葬り去る」旨の投稿のリツイートが害悪の告知に当たるか)、(4) 開示請求書・訴状の公開による著作権・プライバシー権侵害の有無及び損害の発生、(5) 被告作成ツールによるツイート転載が著作権・著作者人格権を侵害するか(Twitter利用規約に基づくサブライセンスの抗弁の当否)、(6) 差止め・削除の必要性、(7) 損害額。 【判旨】 請求棄却。裁判所は、名誉毀損について、「パパ活」という言葉は多義的であり各投稿単体では原告がパパ活をしているとの事実摘示とはいえないとし、一連の経緯と併せて理解しても、原告自身が女子大生に寿司を振る舞う写真をあえて公開し反響を予想していたことを考慮すれば社会的評価の低下は認められないと判断した。侮辱についても、「ガムテ」はガムテープを名札に使った会合に由来するにすぎず、「底辺」は原告自身が批判者に繰り返し用いていた表現に由来するもので、原告と被告が互いに批判し合う「売り言葉に買い言葉」の状況に照らし、いずれも受忍限度を超えないとした。脅迫についても、リツイート元はユーチューバーの情報発信の趣旨と理解でき、害悪の告知には当たらないとした。開示請求書は創作性を欠き著作物に該当せず、訴状については著作物であるとしても遠くない時期に公開の法廷で陳述されるものであり陳述前の公表により慰藉すべき損害は認められないとした。プライバシー侵害も否定した。ツール投稿については、原告がTwitter利用規約により投稿内容の使用等に係るサブライセンス付与権限を含む非独占的ライセンスをTwitter社に許諾しており、被告は開発者利用規約に基づくサブライセンスの範囲内で行為したものであるから、著作権・著作者人格権の侵害は成立しないと判断した。