AI概要
【事案の概要】 本件は、「半田付け装置、半田付け方法、プリント基板の製造方法、および製品の製造方法」に関する特許(特許第6138324号)をめぐる審決取消請求事件である。特許権者である原告(株式会社パラット)が特許無効審判請求に対する審決のうち請求項1、2及び5ないし7に係る発明についての特許を無効とした部分の取消しを求めた第1事件と、無効審判の請求人である被告(株式会社アンド)が同審決のうち請求項4に係る発明についての審判請求は成り立たないとした部分の取消しを求めた第2事件からなる。本件特許に係る発明は、筒状のノズル内に半田片を供給し、溶融前の半田片の端部を端子の先端に必ず当接させた状態で加熱溶融し、溶融した半田片が略球状になろうとするがノズルの内壁と端子の先端に規制されて必ず真球になれないまま停止することで、ノズルからの熱伝導により端子を十分に加熱し、半田付け不良を防止するというものである。特許庁の審決は、甲1(特開2009-195938号公報)を主引用例として請求項1、2及び5ないし7に係る発明の進歩性を否定して特許を無効とし、請求項4については進歩性を肯定した。 【争点】 主要な争点は、甲1発明(先行技術)を主引用例とした場合の各請求項に係る発明の進歩性の有無であり、特に、甲1発明においてフラックス含有量が1wt%の半田を用いて「溶融した半田が必ず真球になれない」という構成(相違点2)に容易に想到し得たか否かが中心的争点となった。また、甲2(学術論文)を主引用例とした場合に、溶融前の半田がピンの先端に当接するか否か(相違点12)も争われた。 【判旨】 知財高裁は、原告の請求を認容し、被告の請求を棄却した。相違点2について、裁判所は次のとおり判断した。まず、千住金属工業の商品カタログにはフラックス含有量2〜4wt%の半田のみが掲載され1wt%のものは掲載されていないこと、ウェブサイトの記事でも一般的なフラックス含有量は2〜4%とされていること、半田メーカーであるニホンゲンマも過去にフラックス含有量1%の半田を製造した実績がなく「やに切れ」の不具合が危惧される旨回答していること等から、フラックス含有量1wt%の半田は本件出願日当時のやに入り半田の市場において普通に流通していなかったと認定した。その上で、甲1にはフラックス含有量の記載や示唆がなく、当業者が溶融した半田が必ず真球にならないという構成の課題や作用効果を知らないまま、わざわざフラックス含有量1wt%の半田を採用する動機付けがないとして、相違点2に係る構成への容易想到性を否定した。甲2を主引用例とする無効理由についても、甲2の図面等からは溶融前の半田がピンの先端に当接するとは認められないとして、進歩性を肯定した。以上から、請求項1、2及び5ないし7に係る発明について特許を無効とした審決部分を取り消し、請求項4について審判請求不成立とした審決部分は維持した。