特許権侵害差止請求控訴事件
判決データ
- 事件番号
- 令和3ネ10101
- 事件名
- 特許権侵害差止請求控訴事件
- 裁判所
- 知的財産高等裁判所
- 裁判年月日
- 2022年9月5日
- 裁判官
- 本多知成、浅井憲、中島朋宏、岩間智女、新井剛、柴田昌聰、河合哲志、小曳満昭
- 原審裁判所
- 東京地方裁判所
AI概要
【事案の概要】 被控訴人(原告・特許権者)は、いずれも発明の名称を「レーザ加工装置」とする特許第3935188号(本件特許1)及び特許第3990711号(本件特許2)に係る特許権を有する者である。控訴人(被告)は、レーザ加工装置である被告製品を製造・譲渡等していた者である。被控訴人は、控訴人が被告製品を製造・譲渡等する行為が本件各特許権を侵害するとして、特許法100条1項及び2項に基づき、被告製品の製造・譲渡等の差止め及び廃棄を求めた。原審(東京地裁)は被控訴人の請求を全部認容し、控訴人がこれを不服として控訴した。なお、被控訴人は控訴審において本件特許権1に基づく請求に係る訴えを取り下げたため、控訴審では本件特許権2(半導体基板の内部にレーザ光を集光して改質領域を形成し、これを切断の起点とするレーザ加工装置に関する発明)に基づく請求のみが審理対象となった。本件の主要な争点は、被告製品の本件発明2の技術的範囲への属否と、本件特許2の有効性(進歩性欠如、サポート要件違反、実施可能要件違反等の無効理由の有無)であった。 【争点】 1. 被告製品の技術的範囲への属否(構成要件充足性):(a)「改質領域」の解釈(多光子吸収による形成に限定されるか)、(b)被告製品によって形成される「レーザ加工領域」が「切断の起点となる改質領域」に該当するか、(c)「赤外透過照明」の解釈(反射照明も含むか)、(d)「集光点の位置」の解釈、(e)構成要件2H(切断予定ラインの始点・終点が内側部分と外縁部の境界付近に位置する構成)の充足性 2. 本件特許2の進歩性欠如:乙150公報(争点7-1)、乙151公報(争点7-2)、乙152公報(争点7-3)をそれぞれ主引用例とする進歩性欠如の主張のほか、原審で主張された多数の主引用例に基づく進歩性欠如 3. サポート要件違反及び実施可能要件違反の有無 【判旨】 控訴棄却(原判決の本件特許権2に基づく請求認容部分を維持)。知財高裁は、まず技術的範囲の属否について、本件発明2の「改質領域」は多光子吸収によるものに限定されず、被告製品によって形成される「レーザ加工領域」のボイド上方領域に生じる「転位部分」は、シリコンの溶融と再固化が生じた「溶融処理領域」に該当し、「切断の起点となる改質領域」に当たると認定した。また、「赤外透過照明」について、光が半導体基板の一方の面から入射し内部を通過して他方の面で反射され再び内部を通過して出射する構成(反射照明)も、半導体基板内部の改質領域を撮像できるものであれば「赤外透過照明」に該当すると判断した。構成要件2H(切断予定ラインの始点・終点)についても、半導体基板を切断する場面での切断方法を特定するものではなく、搬送工程等における機械的強度向上を図る構成であるとして、被告製品の充足を認めた。進歩性については、控訴審で新たに追加された争点7-1ないし7-3(乙150公報、乙151公報及び乙152公報を各主引用例とする無効主張)を含め、いずれについても、赤外透過照明により改質領域を撮像可能な撮像素子を備えるとの構成(相違点)に係る容易想到性が認められないとして、控訴人の無効主張を全て排斥した。サポート要件・実施可能要件違反の主張も退け、被控訴人の差止請求及び廃棄請求を認容した原判決は相当であると結論づけた。