AI概要
【事案の概要】 本件は、被告ら(株式会社IHI及び株式会社IHI機械システム)が有する「真空洗浄装置および真空洗浄方法」に関する特許(特許第5976858号)について、原告(高砂工業株式会社)が特許無効審判を請求したところ、特許庁が「本件審判の請求は、成り立たない」との審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、真空ポンプにより洗浄室とは独立して減圧・低温保持された凝縮室と洗浄室とを開閉バルブで連通させることにより、洗浄後のワーク乾燥時間を短縮する真空洗浄装置に関するものである。原告は、甲1発明(特開2000-160378号)に基づく進歩性欠如(無効理由1)、実施品1発明(HWBV-3N型真空脱脂洗浄機)に基づく新規性・進歩性欠如(無効理由3)、実施品2発明(HWBV-3VS型真空脱脂洗浄機)に基づく新規性・進歩性欠如(無効理由4)、及び先願の要件違反(無効理由6)の4つの取消事由を主張した。 【争点】 (1) 取消事由1:甲1発明に基づく進歩性判断の誤りの有無(構成要件Gの「連通させてワークを乾燥させる」の解釈を含む) (2) 取消事由2:実施品1発明に基づく新規性・進歩性判断の誤りの有無 (3) 取消事由3:実施品2発明に基づく新規性・進歩性判断の誤りの有無 (4) 取消事由4:先願の要件違反(特許法39条2項)に関する判断の誤りの有無 【判旨】 請求棄却。裁判所は、まず構成要件Gの「連通させてワークを乾燥させる」の技術的意義について、単に乾燥工程中に凝縮室と洗浄室が連通されている状態を規定するものではなく、減圧状態に保持された凝縮室と洗浄室を開閉バルブで連通させることにより、差圧によって洗浄室の蒸気を凝縮室に移動・凝縮させ、ワークを乾燥させるという乾燥手段(「凝縮により乾燥させる技術思想」)を特定するものと解した。取消事由1については、甲1発明の凝縮器は洗浄室とともに真空ポンプで減圧されるものであり、洗浄室とは独立して減圧される本件発明の凝縮室とは異なること、また甲3発明の密閉容器による排出は洗浄効果向上のためであり乾燥工程のものではないことから、進歩性を否定できないとした。取消事由2及び3についても、構成要件Gの意義に基づく相違点の認定に誤りはないとした。取消事由4については、凝縮室が洗浄室と独立して減圧される構成は、乾燥時間短縮効果をもたらすとともに装置構成にも差異を生じるため、課題解決のための具体化手段における微差とはいえないと判断し、先願と実質同一ではないとした。