AI概要
【事案の概要】 本件は、被告ら(株式会社IHI及び株式会社IHI機械システム)が特許権者である「真空洗浄装置および真空洗浄方法」に関する特許(特許第6043888号)について、原告(高砂工業株式会社)が請求した特許無効審判(無効2020-80066号)を不成立とした審決の取消訴訟である。本件特許は、真空ポンプで減圧された洗浄室において石油系溶剤の蒸気でワークを洗浄し、洗浄後に洗浄室よりも低温に保持された凝縮室と洗浄室とを開閉バルブで連通させることで、蒸気を凝縮室に移動・凝縮させてワークを乾燥させる技術に関するものである。原告は、甲1発明(特開2000-160378号)と甲3ないし甲8文献の各発明又は周知技術との組合せによる進歩性欠如、公然実施された実施品1・2に基づく新規性・進歩性欠如、及び先願(特許法39条2項)違反を主張して審決の取消しを求めた。 【争点】 (1) 構成要件Gの「連通させてワークを乾燥させる」の技術的意義(本件発明の認定の当否) (2) 甲1発明に基づく進歩性判断の誤りの有無(取消事由1)――甲3ないし甲8の各発明が「凝縮により乾燥させる技術思想」を開示しているか (3) 実施品1発明・実施品2発明に基づく新規性・進歩性判断の誤りの有無(取消事由2・3)――相違点の認定の当否 (4) 先願の要件違反に関する判断の誤りの有無(取消事由4)――本件発明と甲21発明との実質同一性 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。まず、構成要件Gの「連通させてワークを乾燥させる」について、単に乾燥工程中に凝縮室と洗浄室が連通状態にあることを規定するものではなく、減圧・低温に保持された凝縮室と洗浄室を開閉バルブで連通させることにより蒸気を凝縮室に移動・凝縮させてワークを乾燥させるという乾燥手段を特定するものと解すべきであるとした。その上で、甲3発明は洗浄効果向上のための突沸工程であって乾燥工程ではなく、甲4発明の冷却タンクは真空ポンプ保護のための溶剤蒸気回収構成であり、甲5ないし甲8の各発明もいずれも真空ポンプによる排気を前提とするものであって、「凝縮により乾燥させる技術思想」を開示するものではないと判断した。実施品1・2についても、真空ポンプの排気作用により蒸気を移動させるものであり構成要件Gを開示しないとした。先願との関係では、凝縮室の独立減圧構成が全体の乾燥時間短縮効果をもたらすとともに装置構成に微差とはいえない差を生じるとして、実質同一とはいえないとした。以上より、取消事由はいずれも理由がないとして、審決を維持した。