AI概要
【事案の概要】 本件は、被告(株式会社三井ハイテック)が特許権者である「回転子積層鉄心の製造方法」に関する特許(特許第5458082号)について、原告(トヨタ紡織株式会社)が特許無効審判を請求したところ、特許庁が「本件審判の請求は、成り立たない」とする審決をしたため、原告がその取消しを求めた審決取消訴訟である。本件特許は、複数の鉄心片が積層された回転子積層鉄心の磁石挿入孔に永久磁石を樹脂で固定する製造方法に関するもので、最初の親出願から3世代にわたる分割出願を経て登録されたものである。 【争点】 原告は、(1)分割要件の判断の誤り(本件特許は最初の親出願の明細書等に記載されていない「かしめ部なし構成」及び「逃げ空間なし構成」を含み、新たな技術的事項を導入するものであるから分割要件を満たさず、出願日の遡及が認められないこと)、(2)実施可能要件の判断の誤り(かしめ部なし構成等について実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないこと)、(3)サポート要件の判断の誤り(かしめ部なし構成等が発明の詳細な説明に記載された発明ではないこと)、(4)明確性要件の判断の誤り(樹脂ポットの「半径方向内側位置」の特定が不明確であり、請求項1と請求項4が矛盾すること)の4つの取消事由を主張した。 【判旨】 知的財産高等裁判所は、原告の請求を棄却した。取消事由1(分割要件)については、最初の親出願の出願時の技術常識として、回転子積層鉄心の積層の固定方法はかしめに限られず、溶接や接着も選択肢として存在していたと認定した。その上で、最初の親出願の明細書等には、かしめ部・逃げ空間あり構成に係る事項が特に取り上げられて深く検討されていたとしても、記載された発明が当該構成を含むものに限定されるものではなく、本件発明1の構成(上板部材及び下板部材で回転子積層鉄心を上下から押圧して樹脂を充填する方法)は最初の親出願の明細書等に記載されていたと判断し、分割要件を充足するとした。取消事由2(実施可能要件)及び取消事由3(サポート要件)についても、上板部材及び下板部材で回転子積層鉄心を密接させて樹脂漏れを防止する構成が明細書に記載されていることから、いずれも要件を満たすとした。取消事由4(明確性要件)については、「半径方向内側位置」の意味は特許請求の範囲の記載及び明細書の記載から十分に理解可能であり、請求項1と請求項4の間に矛盾はないとして、明確性要件を満たすと判断した。