AI概要
【事案の概要】 本件は、東京医科大学(被告)が設置する医学部医学科の入学試験を受験した女性ら(原告ら)が、同試験の採点に際して性別及び高校卒業時からの経過年数等を理由として不利益な取扱いを受けたことにより損害を被ったと主張し、被告に対し、不法行為に基づき、入学検定料、交通費、宿泊費、納付金差額、逸失利益、予備校費用、慰謝料及び弁護士費用相当額の損害賠償を求めた事案である。被告は、平成18年度から平成30年度までの一般入試及びセンター利用入試の二次試験における小論文試験において、全受験者の得点を一律に減じた上で、男性受験者のうち現役生及び卒業後一定年数以内の者にのみ加点する一方、女性受験者には加点しないという得点調整(本件属性調整)を行っていた。この事実は平成30年に第三者委員会の調査により発覚し、被告は学生募集要項等においてこの調整を一切公表していなかった。 【争点】 主な争点は、(1)一部の原告が実際に入学試験を受験したかどうか、(2)被告の不法行為の成否、(3)被告の不法行為により原告らが被った損害の額である。特に損害については、入学検定料・交通費・宿泊費といった受験費用の損害、本件属性調整がなければ合格していたはずの原告らに対する納付金差額・逸失利益・予備校費用の損害、受験慰謝料及び不合格慰謝料の各金額が争われた。 【判旨】 裁判所は、被告が私立学校法上の学校法人として公の性質を有する大学を設置運営しており、入学者選抜において憲法及び教育基本法等の公法上の諸規定の趣旨を尊重する義務を負うと判示した。その上で、本件属性調整は、性別という自らの努力や意思では変えられない属性を理由に女性受験者を一律に不利益に扱うものであり、教育基本法4条1項及び憲法14条1項の趣旨に反し、「公正かつ妥当な方法」による入学者選抜とはいえないと判断した。原告らは本件属性調整の存在を認識していれば受験しなかったと認定し、被告の行為は原告らの受験校選択の自由を侵害する不法行為に該当するとした。損害については、入学検定料・交通費・宿泊費は合否への影響の有無にかかわらず認容した一方、納付金差額・逸失利益・予備校費用は、本件属性調整を知っていれば受験自体をしなかったという認定と矛盾するとして棄却した。受験慰謝料は1年度当たり20万円、不合格慰謝料は本来合格すべきであった原告3名に各150万円、合格の可能性があった原告1名に100万円を認容した。