分限免職処分取消請求事件
判決データ
- 事件番号
- 令和4行ヒ7
- 事件名
- 分限免職処分取消請求事件
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 裁判年月日
- 2022年9月13日
- 裁判種別・結果
- 判決・破棄自判
- 裁判官
- 林道晴、宇賀克也、長嶺安政
- 原審裁判所
- 広島高等裁判所
AI概要
【事案の概要】 長門市の消防職員であった被上告人(原告)が、消防長から地方公務員法28条1項3号(その職に必要な適格性を欠く場合)に該当するとして分限免職処分を受けたため、その取消しを求めた事案である。被上告人は平成6年に採用され、小隊長を務めていたが、平成20年4月から同29年7月までの約9年間にわたり、消防職員約70人のうち部下等約30人に対し、約80件に上るパワーハラスメント行為を行った。その内容は、顔面を手拳で殴打する等の暴行、「殺すぞ」「クズが遺伝子を残すな」等の暴言、卑わいな言動、プライバシーの侵害、上司等への報告者に対する報復の示唆など多岐にわたるものであった。被上告人は暴行罪により罰金20万円の略式命令も受けている。 【争点】 消防長が被上告人に対してした分限免職処分が、任命権者の裁量権の範囲を超えた違法なものであるか否か。原審(控訴審)は、消防組織の独特な職場環境を背景とした行為であり、被上告人に自身の行為を改める機会がなかったことなどから、分限免職は重きに失し違法であると判断して処分を取り消した。 【判旨】 最高裁は原判決を破棄し、被上告人の請求を棄却した。まず、分限処分については任命権者に一定の裁量権が認められるが、免職の場合には公務員としての地位を失うという重大な結果になることから、特に厳密・慎重な判断が要求されるとの判断枠組みを示した。その上で、本件各行為は5年を超えて繰り返され約80件に上ること、対象者が約30人と消防職員全体の半数近くに及ぶこと、刑事罰を科された暴行を含む多岐にわたる悪質な行為であること等から、被上告人が消防職員として要求される一般的な適格性を欠くとみることは不合理ではないとした。また、行為の頻度等に照らし、指導等による改善の余地がないとみることにも不合理な点はないとした。さらに、消防組織では職員間の緊密な意思疎通が住民の生命・身体の安全確保のために重要であり、報復を懸念する職員が相当数に上ること等から、被上告人を組織内に配置しつつ適正な運営を確保することは困難であるとした。これらを総合考慮すれば、消防長の判断が裁量の限度を超えたものとはいえず、消防組織に上司が部下に厳しく接する傾向があったとしても結論は変わらないと判示した。裁判官全員一致の意見である。